富士大・楠「バスター打法」で本塁打 7連覇へ弾み

富士大対岩手大 1回表富士大2死、先制となる右越え本塁打を放ち生還する楠

<北東北大学野球:富士大9-0岩手大>◇第2週最終日◇1日◇秋田・八橋

 7連覇を狙う富士大(岩手)の3番・楠研次郎外野手(3年=東海大相模)が初回の先制ソロ本塁打を含む3安打3打点の活躍で岩手大を9-0(7回コールド)で下し、開幕4連勝した。過去3試合で12打数1安打と苦しんでいた主砲が、試合前の思い付きで急きょ取り入れた「バスター打法」が大当たり。復調のきっかけをつかみ、6日のノースアジア大(秋田)との全勝決戦に弾みをつけた。

 突然だった。初回2死走者なし。楠は打席に入るなり、1球ごとにバントの構えからタイミングをとりだした。6球目の甘い真ん中高めのチェンジアップを振り抜くと、打球はライトスタンドに飛び込んだ。全5打席でバスター打法を貫いて3安打を放ち「今までやったことがない。うまくはまった。(ソロは)こすった感じだったけど風に乗って入った」。不振の3番が苦肉の策で息を吹き返した。

 前日は無安打に終わり、この日の朝の打撃練習でも浮上のきっかけがつかめなかった。「利き腕の左手がうまく使えず、レベルスイングができてなかった」と不調の原因を分析。「バットがスムーズに出るようになった。次まで調子が完全に戻らなければまたやるかも」と笑顔で振り返った。

 1年春から3度ベストナインを受賞している主砲の目には、去年までとは違う景色が広がっていた。「イケイケでやっていたけど、今年は違う。1年からクリーンアップを任せられているプレッシャーは感じる。チームの勝利に貢献したい」。主軸としての自覚があるからこその打撃改造だった。豊田圭史監督(33)は「本人が考えた中での選択肢の1つ。選手がちゃんと考えて、最善の結果を出すために策を考えてくれた」と楠の判断に目を細めた。

 自らの決断で、道を切り開いてきた。福島・楢葉町生まれの楠は、投手として東海大相模に野球留学。1学年後輩の小笠原慎之介(現中日)や吉田凌(現オリックス)の厚い壁に阻まれ「これは桁が違う」と高2秋に自ら外野手に転向した。高3夏には「1番レフト」で甲子園に出場し、2安打を放った根性の男だ。「東北出身の人間として、北東北を盛り上げていきたい」。そのためには、7連覇、その先にある大学日本一が大前提。楠の打撃から目が離せない。【高橋洋平】

 ◆楠研次郎(くすのき・けんじろう)1996年(平8)9月26日、福島・楢葉町生まれ。楢葉北小1年から投手として野球を始め、楢葉中では軟式野球部。東日本大震災の影響で、中3でいわき市立草野中に転校。東海大相模では高2秋に代打で初出場。高3夏の甲子園は盛岡大付に初戦敗退。179センチ、84キロ。左投げ左打ち。