楽天梨田監督、采配ズバリ!固定観念ナシで20安打

8回表楽天無死一塁、右越え本塁打を放ち森山周コーチ(左)に迎えられる島内(撮影・野上伸悟)

<西武2-10楽天>◇6日◇メットライフドーム

 熟練のタクトがさえる。楽天は梨田昌孝監督(63)が大胆な打線の組み替えを敢行し、西武に楽勝した。開幕ダッシュを支えたペゲーロ、ウィーラー、アマダーの助っ人上位打線をあっさりと解体。左打者を7人並べるオーダーで両リーグ最多の20安打を連ねた。「今日を勝つための最善」という現実だけを追い、固定観念にとらわれない用兵、戦術が際立つ。貯金12、首位堅持だ。

 5月上旬の首位に興味はなかった。メットライフドーム名物の長い階段を下りながら梨田監督は言った。「シーズンは長い。今いいからって…。ルーキーの活躍はみんなの刺激になるけど」。ベンチに腰掛け、また言った。「1年間は長い。いい時ばかり続かない。人生も。悪い方が出たとき、どうやりくりするか」。西武菊池らに3安打に封じられた一夜明け。負の兆しを見逃さず、1勝を積むため手を打った。「今日は並びが変わる。楽しみにしていて下さい」と笑った。

 看板の「2番から助っ人3枚」を崩した。「アマダーがつまずいている。まだ慌てる時期じゃない。体をキレを戻してくれないと」。3番に島内を挟んだ。一方で、腰の不安があり前日途中交代していたペゲーロは「考慮して、DHで」2番に据えた。同じく左かかと痛で欠場していた茂木は「自分からは一切痛いと言わない、頑固な男。今日は大丈夫」と1番に戻し、攻撃力の低下を防いだ。さらに相手先発の野上を意識し、左を7人連ねてみせた。

 獅子の本拠地は楽天の打撃練習場と化した。1回にペゲーロから5長短打で5点。島内、聖沢、岡島と左バッターが絡んだ。手を緩めず猛打賞が5人。それでも試合後の梨田監督は静かにつぶやいた。「6点目がなかなか取れなかった。1死三塁、ゲッツーもあった。できる限り、1点でも多く取らないと」。4、6、7回に無死の走者をバントで進めるという現実路線で、愚直に中押しとダメ押しを追い求めていた。

 打線的中にも「いいかなと思って。そんなに大きな答えを持っていないし」と素っ気なかった。思えば外国人を並べたのも、岸の開幕離脱で打って出ようとしたから。1点、1勝を追い求めて振り返れば貯金12。温厚の仮面をかぶったリアリストが前だけを見ている。だから選手が踊る。【宮下敬至】

 ▼楽天が20安打で快勝。楽天の20安打以上は、16年9月18日西武戦以来で10度目。この日はペゲーロ、島内、ウィーラー、聖沢、足立の5人が猛打賞。1試合に3安打以上が5人は、14年4月12日ロッテ戦(岡島、藤田、銀次、西田、嶋)に次いで2度目。パ・リーグ記録の6人には惜しくも届かなかったが、球団の最多記録に並んだ。