日本ハム石井一、誕生日に遊撃初先発で5連勝けん引

8回表日本ハム1死二塁、右中間を破る適時三塁打を放ち滑り込む石井一(撮影・黒川智章)

<オリックス2-5日本ハム>◇6日◇京セラドーム大阪

 23歳の誕生日を迎えた日本ハムのドラフト2位ルーキー石井一成内野手が、チームの緊急事態を救った。6日のオリックス7回戦(京セラドーム大阪)で1点リードの8回にバースデータイムリーを放ち、貴重な追加点を挙げた。前日5日オリックス戦で左かかとを負傷した中島に代わってプロ入り後初めて本職の遊撃で先発。2安打1打点2得点で穴を埋め、5月負けなしの今季初5連勝に貢献した。

 代役を任された石井一が主役だった。この日は23歳の誕生日。「人生で初めて」というバースデー試合は心が温まった。3回に最初の打席に入るとスタンドから「ハッピーバースデー」のメロディーが響いた。敵チームのファンからも拍手が送られ、相手先発コークも演奏が終わるのを待って投球した。石井一は「本当にうれしかった。ファンに支えられているとあらためて感じた」と感謝の思いがあふれた。

 声援を力に変え、勝負強さを発揮したのは第4打席。リードわずか1点の緊迫した展開が続いたが、ぶち破った。8回1死二塁。右中間への適時三塁打で点差を2点に広げた。さらに暴投で本塁を陥れて5点目。5連勝への流れをグッと引き寄せた。

 「9番遊撃」で先発。これまで二塁で17試合に先発してきたが、プロ入り初の本職の守備位置での先発は、チームの緊急事態によって訪れた。正遊撃手の中島がケガで離脱。「昨日(中島が)厳しいと聞いて準備していた。緊張した」。栗山監督は「自分のポジションを取るというのはこういうこと。よく頑張ったよね」と、持ち味の守備力に打撃でも期待に応えた新人をたたえた。

 試合前に誕生日の祝福メッセージを送ってくれた家族は、原動力だ。弟巧さんは今春、母校の作新学院に入学した。3月25、26日の札幌ドームでのオープン戦に両親と姉とともに訪問を受けた。近藤に教わり、大谷らと行ったことのある札幌市内のすし店に連れて行き「一応自分が払いました」と喜んでごちそうした。「北海道のすしは全然違う。おいしいね」と言いながらほおばる笑顔がうれしかった。

 石井一の「応援ツアー」は、甲子園への挑戦が始まる巧さんが参加できる最後の家族旅行だった。「同じショート。自分も頑張るけど、弟も頑張って欲しい」。巧さんにとって石井一は憧れの存在。兄として背中でプロの姿を見せ続けるのが、モチベーションの1つだ。

 プロ初の三塁打を含む2安打1打点。記念すべき日を自ら彩り「最高の誕生日になりました」。中島の早期復帰は難しい見込みでチームにとってはピンチ。期待がさらに高まる石井一は「ルーキーらしくハツラツとしたプレーをしていきたい」と意欲的に話した。【保坂果那】