オリックス赤間、故郷の福島・楢葉町に捧ぐプロ1勝

プロ初勝利を挙げた赤間(中央)はナインから祝福される(撮影・黒川智章)

<オリックス4-3日本ハム>◇7日◇京セラドーム大阪

 サヨナラ勝ちで大脱出だ。オリックスが延長12回の熱闘の末に日本ハムを寄り切り、連敗を4で止めた。1死満塁で駿太外野手(24)が右前にサヨナラ打。延長11回から2イニング無失点の赤間謙投手(26)が、プロ2年目で初勝利を手にした。東日本大震災の被災地、福島県の双葉郡楢葉町出身の15年ドラフト9位右腕が、連敗に苦しんだチームを救った。

 小田和正の切ないボーカルが流れる場内で、だれよりも先に祝福の水をかけられたのは赤間だった。特別イベント「KANSAI CLASSIC 2017」。オリックスナインは阪急のユニホームに身を包み、イニングの合間に流れたのは懐かしのメロディー。79年のヒット曲、オフコースの「さよなら」が盛り上げたサヨナラゲームで、赤間が勝ち投手になった。

 「(任された)2イニングをゼロに抑えることだけ考えて、投げていました。きょう投げることができてよかったです。やっとプロのスタートラインに立てました」。開幕1軍も、登板機会がないまま出場選手登録を抹消され、6日に1軍復帰したばかり。今季初登板でプロ1勝に巡り合った。

 7回以降は互いに1歩も引かない総力戦。中継ぎ陣を使いきり、平野が今季初のイニングまたぎで9、10回を締めた。守護神降板後のマウンドを、赤間は託された。延長12回2死二塁で打席に迎えたのは中田。相手主砲を三塁ゴロに抑えた勝負球は金子に助言をもらったチェンジアップだった。「無理に変化させようとしなくていい。中指と薬指に力を入れ、直球を投げる投げ方で投げれば自然に変化する」と教えられた球で、チームの負けを消した。

 福島第1原発から近い楢葉町出身。自宅は半壊し、その後取り壊された。今も父雄二さんは福島・いわき市の仮設住宅、母貞子さんは千葉市と離ればなれに住む。プロ入りしたときから「野球ができる幸せ」と平穏な日常のありがたさを訴え、生活が一変した人々に「1軍で活躍することで喜んでいただければ」の思いを込めて投げてきた。

 プロ初の勝利球は、サヨナラ勝ちのどさくさでどこかに消えた。「でも代わりのボールをいただきました。両親に贈りたかったけど、自分の部屋に置いておくと思います」と明かした。「2011・3・11」と刺しゅうしたグラブでつかんだプロ1勝だった。【堀まどか】

 ◆赤間謙(あかま・けん)1990年(平2)11月14日、福島・楢葉町生まれ。楢葉南小1年から楢葉イーグルファイターズで野球を始める。楢葉中では、相双中央シニアに所属。東海大山形、東海大、鷺宮製作所を経て、15年ドラフト9位でオリックス入り。昨季は中継ぎ中心(先発1試合)で24試合35イニングに登板し0勝1敗、防御率3・09。今季推定年俸は1200万円。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。