阪神が菅野攻略 糸井の存在で1回に初めての作戦

巨人対阪神 1回表生還した糸井は笑顔(撮影・清水貴仁)

<巨人2-4阪神>◇9日◇東京ドーム

 気持ち良すぎる菅野打ちや! 阪神が、3試合連続完封中だった巨人エース菅野に土をつけた。1回1死三塁から糸井嘉男外野手(35)が右前に先制適時打を放ち、先頭打者の高山から数えてわずか10球、試合開始4分で4戦連続完封の夢を打ち砕いた。その後も鳥谷の適時打、福留の2ランで加点。菅野に初黒星をつけ、チームは6連勝で首位をキープした。

 電光石火の攻撃が52年ぶりの偉業を打ち砕いた。1回表1死三塁。糸井がスライダーに反応した。鮮やかに体を回転させると、打球は右前に弾んだ。「先制につながってよかった。3連続完封しているピッチャーなので、点を取っていこうという話はしていた」。2球で追い込まれても、勝負強さを発揮する。しかも相手は菅野だ。リーグ単独トップとなる26打点目で、4連続完封の記録を阻止した。

 糸井が迎えた初回の打席。そこに至る過程は今季初めてのものだった。先頭の高山が二塁打で出塁。金本監督は初球から迷わずバントのサインを出した。「二塁のケースだし、本来なら右打ちやフリーに打たせたりしたが、相手が菅野。そんなに簡単に打って打って…、では取れない。糸井が犠牲フライでも打ってくれるかなと」。北條が投前に転がし、走者を三塁に進める。開幕31試合目で初めて初回に犠打を記録した。

 通常、金本監督は序盤の送りバントを選択肢に入れない。「ハナからバントは好きではない」と公言する。2番打者に攻撃的な姿勢を求め、チャンス拡大を図る。就任以来掲げるポリシーを曲げても、1点を取りに行った。言うまでもなく、相手が菅野だからだ。そして昨年と違うのは、得点圏打率リーグトップの糸井の存在だ。3番打者は思った。「1、2番が先制のチャンスを作ってくれたので、何とかランナーをかえすんだと思って、打ちにいった」。執念の采配に選手が応え、3回4得点につながった。

 この日、打点を挙げたのは、糸井、鳥谷、福留のベテラントリオだ。「相手が菅野になると、打てるバッターも限られてくる。あの3人がチームを勝たせる。成績でも内容でも発言でも勝たせていかないと、このチームは勝っていけない」。金本監督は育成に力を入れるが、それは中堅、ベテランの働きがあってこそと考えている。だからオフには自ら出馬して、糸井を獲得した。6連勝で20勝に到達。リーグ一番乗りだ。そして貯金「10」に王手をかけた。勢いではなく、首位の強さを感じさせる勝利だった。【田口真一郎】