中日鈴木苦節4年プロ1勝 昨季ヘルニアで登板なし

中日対DeNA プロ初勝利の鈴木はウイニングボールを手にドアラの祝福に笑顔を見せる(撮影・前岡正明)

<中日8-3DeNA>◇9日◇岐阜

 浜松の鈴木が、岐阜でプロ初勝利を挙げた! 中日鈴木翔太投手(21)が、今季2度目の先発登板で6回途中2失点の好投。スライダー、フォークを交えながら、5回には3者連続三振を奪い、プロ最多の9三振を奪った。13年ドラフト1位入団も、故障などで過去3年間は未勝利に終わった。苦しい期間を経て、4年目でうれしいウイニングボールを手にした。

 雨の中、鈴木は笑顔で荒木からウイニングボールを受け取った。プロ4年目での初勝利。お立ち台で「時間はかかりましたけど、1軍の舞台で勝てたのは一番うれしい」とかみしめた。

 6-0の5回。無死から連打で一、二塁の危機も、7番高城、代打エリアンを空振り三振で2死とした。「2死までは何も考えずにいった。(前回の2日)広島戦を思い出して落ち着いていった。最後は腕を振った結果だと思う」。倉本には外角低めフォークで空振り三振。3者連続の空振り三振で得点を許さなかった。6回途中まで8安打2失点。5回2死から崩れた前回登板の反省を生かした。

 「苦しい時期があったから勝てた。去年が一番悔しかった。ケガもあって自分の球を投げられなかった」

 昨年もローテ入りを期待されたが、春季キャンプ後に胸椎のヘルニアで離脱した。治療法は動かさないこと。呼吸をするにも痛みが出る。寝返りも打てない。野球ができず、じっと苦痛に耐えた。完治は難しく、胸回りの入念なストレッチで痛みが出ないように予防するしかなかった。

 昨年11月末から参加した台湾でのアジア・ウインターリーグ中、朝目覚めて起き上がろうとした瞬間に再発した。症状を言えば帰国になるかもしれない。誰にも言わずに我慢。1カ月間を戦い抜き日本へと戻った。

 体の不安も軽減し、フォーム改造に着手した。体が横振りになり直球がシュート回転する原因になっていた投球フォームを、縦回転に意識した。春季キャンプでも徹底し固めていった。「たまにいいときの映像は見るけど、懐かしいと思うだけ。今のフォームしか見ない」。過去を振り返らず、今だけ見つめた。力強い真っすぐを取り戻した。

 13年ドラフト1位で華々しく入団した際は720万円あった推定年俸も、昨年1軍登板がなく450万円となった。「チームに貢献したい。これからもっともっと頑張っていきたい」。崖っぷちだった21歳が、はい上がる。【宮崎えり子】

<鈴木翔太(すずき・しょうた)アラカルト>

 ◆生まれ 1995年(平7)6月16日、静岡・浜松市。小1から野球を始め、5年から投手。聖隷クリストファー(静岡)では甲子園出場なし。13年ドラフト1位で中日入り。

 ◆絶賛 入団当時の谷繁監督が「高校生であんなバランスの取れたフォームは見たことがない」と驚いた。1年目の6月、西武戦で早くも1軍デビュー。

 ◆もってる男 仮契約の当日、浜松市のホテルで同市に本社を置く自動車大手スズキの鈴木修会長とばったり。以来「浜松のスズキ」として応援してもらっている。今年1月に自主トレしたオーストラリアでは、知り合いの紹介で落語家桂ざこばと初対面。3度も食事をともにした。

 ◆飛躍 伸び悩みと故障で、昨年は初めて1軍登板なし。フォームを改善し、昨年12月のアジア・ウインターリーグ(台湾)にウエスタン選抜で参加。決勝戦に先発し勝ち投手に。

 ◆サイズなど 右投げ右打ち。183センチ、74キロ。家族は両親と弟。今季推定年俸450万円。