打たせない西武菊池、沢村超え伝説ペース驚異被打率

6回を無失点に抑える西武先発の菊池(撮影・上田博志)

<オリックス0-11西武>◇12日◇ほっともっと神戸

 打たせない。西武菊池雄星投手(25)が6回被安打3、無失点の好投で今季4勝目を挙げた。立ち上がりはフォームのバランスを崩し、制球を乱したが、すぐに修正。最速154キロの速球と、144キロのスライダーで相手打線をねじ伏せ、開幕以来のチームのオリックス戦連敗を5で止めた。被打率は12球団トップの1割4分2厘。過去のシーズン被打率ベスト10に名を残す沢村栄治、スタルヒンらを超えトップの景浦将に迫る驚異的な数字だ。「打たれないエース」が引き寄せた流れに乗り、打線も今季最多の17安打で11-0と大勝した。

 流れは力で引き寄せる。4回2死。菊池は2球でオリックス中島を追い込むと、この日最速154キロ直球を内角いっぱいに決めた。「試合にはターニングポイントがある。中島さんは尊敬すべきすごい打者。相手の4、5、6番を乗せてはいけないと、試合前のミーティングでも話があった」。完璧な投球で相手を沈黙させると、5回表には秋山、源田の連打から浅村の3ラン。試合が決まった。

 貫禄の投球。しかし、立ち上がりはよくなかった。初回。頭が本塁方向に突っ込みすぎる悪癖が出て、球が暴れた。直球が浮き、スライダーも決まらない。しかし、エースはあわてなかった。「ここ数試合、序盤からすべての球種でストライクが取れていたけど、そんなのは年に何試合かだけだと思っていました」。冷静に、自分のフォームを見つめ直した。

 軸足1本でしっかりと立ってから、投げにいく。2回が終わるころには、フォームのバランスが整った。バロメーターはスライダーのスピード。「フォームのバランスがいいと、自然とスピードが出る」。3回には144キロに達していた。

 その回、2死から武田の打球を手で止めた。勢いを失った打球を、後方の浅村がさばいてスリーアウトとなったが、ベンチはざわついた。しかし本人は「指先には当たらないようにしましたから」と事もなげ。打たせず、3者凡退で終えることにこだわった。

 大事をとって6回終了で降板したが、辻監督の「オリックスには5連敗しとる。頼むぜ」という試合前の声に応えた。「悪いなりに抑えられてよかった。1度、フォームのバランスが整ったので、今はどうすればそこに戻れるかが分かる。それが大きい」。今日13日は2軍から昇格の佐野が今季初先発する。土肥投手コーチは「佐野も楽な気持ちで投げられる。今日の雄星はまさにエースの仕事」とたたえた。【塩畑大輔】

 ◆菊池の被打率 菊池の今季7試合の被安打は4→5→6→1→3→2→3の計24本。被打率1割4分2厘は両リーグ規定投球回到達投手でトップだ。2リーグ制後、規定到達投手でシーズン被打率が最も低かったのは、セが70年村山(阪神)の1割6分1厘、パが56年稲尾(西鉄)の1割7分3厘。指名打者制採用後のパ(75年以降)は07年ダルビッシュ(日本ハム)の1割7分4厘。これらの数字と比べても、ここまでの菊池は傑出している。

 ◆景浦将(かげうら・まさる)1915年(大4)7月20日生まれ。愛媛県出身。松山商の投手兼三塁手として32年の甲子園で春優勝、夏は準優勝。立大を経て36年阪神入団。プロ入り後4番を務めるが、36年秋には投手も兼任し、防御率0・79でタイトルを獲得。37年春には打点王、37年秋には首位打者を獲得するなど投打で活躍した。44年従軍し、45年フィリピンで戦死。65年に殿堂入り。打者通算では打率2割7分1厘、25本塁打、222打点。投手通算は56登板で27勝9敗、防御率1・57。