筒香復帰4号 打球速度が物語る規格外の大きさ

DeNA対中日 3回裏DeNA2死一塁、2点本塁打を放つ筒香(撮影・足立雅史)

<DeNA9-4中日>◇23日◇横浜

 主砲が豪快弾とともに帰ってきた。股関節に違和感を訴えていたDeNA筒香嘉智外野手(25)が5試合ぶりに出場し、4号2ランを含む3安打3打点と大暴れ。3回の本塁打は、球場に設置してある弾道測定器(トラックマン)によると、打球速度が昨年の球団平均を12キロも上回る170キロ。右翼席上段まで運ぶ存在感抜群の1発で、チームを4位浮上に導いた。

 迷わず振り抜き、打球に力が乗り移った。3回2死一塁。筒香は初球の内角高め、129キロの落ちきらないチェンジアップを見逃さなかった。体が自然に反応した。右翼席最上段を突く4号2ラン。規格外の大きさは、打球速度170キロ(昨年の球団平均158キロ)と数字が物語っていた。お立ち台では一礼して言った。「完璧です。今日のホームランが(今季)一番よかった」。「ただいま」と言わんばかりのあいさつ代わりの1発だった。

 股関節違和感で欠場した21日の巨人戦。人知れず、バットを振り込んだ。グラウンドには姿を見せなかったが、横浜スタジアムに隣接する室内練習場に約1時間こもった。ラミレス監督も気づかなかった。無心で野球と向き合い「今までは打ちにいっていた。この4日間でいろいろと整理できた。しっかり(球を)待って、打ちにいくことができた」。まさにけがの功名。ただ、主将で主砲の責任感が原動力だった。

 ここ4試合、ベンチで戦況を見守った。「チームに迷惑をかけてしまっていることは申し訳ない」と謝意と同時にこみあげる感情。「これだけ試合に出られないと出たくてウズウズする。やっぱり野球が好きなんだな、と」。試合から離れ、素直な気持ちがこみ上げていた。シーズン前にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、15年オフもドミニカ共和国のウインターリーグに参戦。毎年オフ返上の野球漬けの日々にぽっかりと穴があいた。

 失った時間を取り戻すように打って、走る。2点リードを許した1回2死三塁で右前タイムリー。さらに次打者の宮崎の右越え二塁打に一塁から激走した。三塁ベースを右足で蹴ったところで顔を上げた。送球を確認しながら、いけると踏んでホームへ一直線。最後は滑り込みながら左手でタッチして同点のホームを陥れた。先頭打者となった6回には、今季3度目の猛打賞となる中越え二塁打を放ち、勝ち越し走者として生還。躍動する姿に仲間も呼応し9得点を奪い快勝した。大暴れの筒香は一言。「体は問題ないです」。その言葉に疑いの余地はない。【栗田成芳】

 ◆トラックマン デンマークのトラックマン社が03年に開発した弾道測定器。ミサイル追尾のレーダー技術を応用して球速、球の回転数、回転角度、打球の角度や飛距離などを正確に計測する。ゴルフのツアーでは公式計測器として採用され、大リーグでは全30球団が使用。日本では楽天がいち早く導入。セ・リーグではDeNAが使って16年CS進出につなげた。

 ◆打球の速度 大リーグでは15年に「スタットキャスト」システムが全30球場に導入された。レーダーとビデオ分析が合体したもので、ボールの速度から野手の動きまで、グラウンド上のものすべてを追跡し、瞬時に球の速度や走った距離などを測定する(現在このシステムの中で投手の球速を測るのにトラックマンが使用されている)。17年シーズンで一番速い打球を放ったのはヤンキースの新人アーロン・ジャッジ外野手(25)。4月28日のオリオールズ戦で放った本塁打の速度が119・4マイル(約192キロ)と測定された。ちなみにその本塁打の飛距離は435フィート(約133メートル)だった。