広島の熱男・安部、進化の秘訣ボールの内側打つ練習

2回表広島1死、安部は右三塁打を放つ。投手マイコラス(撮影・松本俊)

<巨人2-7広島>◇26日◇東京ドーム

 ついに姿を現した! 広島安部友裕内野手(27)が規定打席に到達。この日2安打で打率を3割5分1厘とし、いきなり首位打者に躍り出た。「覇気」が口癖のコイの熱男。11日にリーグを代表して参加した球宴会見で緒方孝市監督(48)も「売り出し中の安部」と全国のファンに宣伝した推しメンだ。チームは首位阪神にゲーム差なしまで肉薄した。安部の持ちネタ「覇気」で一気に追い抜く。

 安部が右手をベンチに突き上げた。規定打席到達直前の6回の第3打席。1点リードの無死二、三塁で、巨人マイコラスのカーブにバットを合わせた。「もう来るかなと。センターにしっかり返せた」。中前2点適時打で巨人を突き放す。そして規定打席に乗った4打席目は、左腕戸根から死球。プロ10年目で初めて打撃成績の一番上に、自分の名前を載せてみせた。

 「うれしくないわけはない。とにかくチームの勝利に貢献出来てよかった。好調というのはない。つなぐ気持ちと、覇気だけです」

 進化の秘訣(ひけつ)はボールの内側を打つ打撃練習だ。ボールを引きつけ、強く左方向に打つ意識を持つ。昨秋のキャンプでは早出練習より早い「スーパー早出」で振り込んだ。口癖は、15年に東出コーチに「覇気がないぞ」とハッパを掛けられて始まった「覇気」。言霊に導かれるように安打を重ね、打率は3割5分1厘。ついに日の当たる場所に躍り出た。

 兄の影響で小2から始めた野球は「最初は嫌で仕方なかった」。本当はサッカーが好きで、母に「野球に行きたくない」と泣きつき、困らせたこともあった。「特別上手でもなかった。でも続けることが大事ですね。本当によかった」と言うように、当時から継続する才能があった。

 中学2年で左打ちに転向。進んだ福岡工大城東では2年秋に、あと1勝でセンバツのところで失策を犯して負けた。大型内野手で注目されて迎えたドラフトは、恒例の指名を伝える校内放送が、まさかのトラブル。「カープ、1位な」と放送ではなく担任教師から伝えられた逸話も残る。

 何かとツイていない日々にはもうおさらばだ。11日の球宴会見で「うちで今、売り出し中の安部です。ものすごく良い形で活躍してくれています」と名指しで紹介した緒方監督も「今からが勝負。ただそれだけの数字が残っているということは、彼が目指す打撃を積み重ねてきたということ。このまま続けてほしいね」とハッパを掛けた。チームは3連勝で首位阪神にゲーム差なしと肉薄。覇気が安部を、広島を変える。【池本泰尚】

 ◆安部友裕(あべ・ともひろ)1989年(平元)6月24日、福岡県北九州市生まれ。福岡工大城東2年夏、甲子園でベンチ入り。07年高校生ドラフト1巡目で広島入団。4年目の11年6月6日ソフトバンク戦で1軍初出場。昨季は自己最多の115試合に出場した。通算323試合、725打数197安打(打率2割7分2厘)、8本塁打、67打点。181センチ、81キロ、右投げ左打ち。今季推定年俸2100万円。

 ▼広島が巨人戦に5連勝。このカードで同一シーズンに5連勝以上は06年6~10回戦以来、11年ぶりだ。これで今季の巨人戦は○○○●○○○○○の8勝1敗。巨人戦で9回戦までに8勝したのは、

 61年中  日○○●○○○○○○

 73年中  日●○○○○○○○○

 97年ヤクルト○○●○○○○○○

に次いで4度目となり、広島は初めて。9回戦を終わって、巨人が打率2割1分8厘の28得点に対し、広島は打率2割9分6厘の63得点と、広島が強力打線で巨人を圧倒している。