楽天ペゲーロ最長不倒153m満弾、裏に巧み用兵術

4回裏楽天2死、右越え満塁本塁打を放つペゲーロ(撮影・野上伸悟)

<楽天6-1西武>◇27日◇koboパーク宮城

 強い。楽天は投打がかみ合い、5連勝していた西武に完勝した。4回、カルロス・ペゲーロ外野手(30)がライト場外に消える10号満塁本塁打。球団の測定機トラックマンがはじき出した飛距離は153・1メートル。先発美馬からの継投も危なげなく決まった。選手の状態を見極めて離脱を未然に防ぎ、能力を最大限に発揮させる梨田昌孝監督(63)の手綱さばきが際立つ。離脱者なし、イヌワシが一丸で首位をひた走る。

 巨漢が思いきり腰を切った。131キロのスライダーが時速189・5キロですっ飛んで、153・1メートル先のライト場外に落ちた。先発美馬なら、4回のグランドスラムで楽天の勝ちは決まった。ペゲーロは「神様のおかげだね」と言った。敬虔(けいけん)なクリスチャンに天が力を貸した。ただ、こう言い換えてもいい。梨田監督のマネジメント能力が、Koboパーク宮城で“最長不倒”の本塁打を打たせた。

 腰に不安のあるペゲーロを監視し、巧みに操っている。前日。大阪からの移動試合は練習を本人に任せた。「練習は行方不明でいい。室内でやっている。試合に来ればいい」。足首に不安のあるウィーラー、調子にムラがあるアマダーと、指名打者を使い分けている。「長く離脱されると困る。うまく調整して、かつ、勝っていかなくてはいけない。一番難しいんだけどね…」。気配りは外国人にとどまらない。

 塁を埋めた島内、岡島、嶋は、前日の試合でスタメンから外れていた。「万全でない面もある。疲労もある。1つになってやっていくことがベスト」。3割を超えていようが正捕手だろうが、体調を見極めて使わない勇気がある。

 徹底的にリスクを回避する老練な用兵。球団のバックアップも見逃せない。どんなに小さな異変でも報告するよう選手に伝え、ケガを押して…の美徳を排している。つなぎ役を果たした嶋は言う。「言いづらさのない空気を作ってくれる。感謝しています。長いシーズンで必ず生きてくる。休ませていただく以上、逆に責任は増す」。イーグルス自慢の集中打には裏打ちがある。

 コンディションを維持すべく、用兵に無数の選択肢を持つ。二塁の銀次は藤田のオプション。一塁今江は銀次のオプション。外野のオプションにルーキー田中。疲れの見えたルーキー森原の持ち場に、すぐさま福山を充てブルペンの質も落とさない。ちょうど1週間前、梨田監督は「交流戦まで5割」と現実的な目標を立てた。ノルマを達成し「いい野球ができている」と言った。いかに余力を残して勝負の夏に入るか。選手の状態という貯金も着々と蓄えていく。【宮下敬至】

 ◆大リーグ最長弾 諸説あり、1921年にベーブ・ルースが放った575フィート(約175・3メートル)や1953年にミッキー・マントルが記録した565フィート(172・2メートル)などが有名。データ分析システム「スタットキャスト」の導入で正確な計測が可能になった15年以降では、マーリンズのジアンカルロ・スタントンの504フィート(約153・6メートル)が最長。昨年8月6日ロッキーズ戦で記録した。今季最長はダイヤモンドバックスのジェーク・ラムが4月29日ロッキーズ戦で放った481フィート(約146・6メートル)。