楽天30勝 パワー打線求めたドラフト、助っ人戦略

2回裏楽天2死一塁、右越えに10号本塁打を放ちペゲーロ(右)に迎えられる茂木(撮影・野上伸悟)

<楽天13-2西武>◇28日◇koboパーク宮城

 楽天が強い。FA移籍の岸孝之投手(32)を先発に立て交流戦前最後となる西武戦に圧勝し、今季42試合目で30勝に到達した。パ・リーグ史上4番目の早さで節目を踏み、堂々の首位で明日30日からkoboパーク宮城に巨人を迎える。強さの原動力は破壊力抜群の打線。同じく強打を誇る相手に17安打、13得点で圧倒した。長い月日をかけて強いスイングという武器を手にしたイヌワシ集団が、「強いパ」の代表としてセ・リーグに襲いかかる。

 岸のKoboパーク宮城1勝を見届けようと、最多の2万7314人が集まった。ファンはいきなり“つるべ打ち”を目撃した。幕開けはペゲーロの2試合連続本塁打。2回は生え抜き初の2桁となる茂木の10号2ラン。3回は島内、岡島、嶋、茂木とおなじみの顔がタイムリーを重ねた。梨田監督は「みんなで3回までに10点…開きすぎて岸も内角に行きづらかった」とまで言った。速い球足の17安打に、生まれ変わった楽天の強さが詰まっていた。

 古参の関係者が、柵越え連発のフリー打撃を見てつぶやいた。「あれだけ『振れない』と悩んでいた。時間がかかるものですね」。創設時から得点力不足が弱点。11年に就任した星野監督が「パワーが足りない。今のパでは勝てない」と断を下した。不動の4番・山崎武司を構想から外し、うんとスケールの大きな打線を組む-。強く振れる選手の獲得と、振るための指導。2つの命題に着手した。

 ぶれずにまい進した。外国人の補強はパワーを最優先。監督を務めた大久保博元氏を12年の打撃コーチに招聘(しょうへい)し、2年前には梨田監督の就任に合わせ、フルスイングが代名詞だった池山コーチを呼んだ。ドラフト戦略にも攻めの姿勢を前面に出し、コツコツと土壌を整備した。

 この日のスタメン野手は、外国人の大砲3枚と守備の名手藤田を除いて生え抜き。体とスイングの強さにこだわって指名したドラフト3位以下の面々だ。打者の左右やタイプがかぶっても目をつぶり、競争をあおる材料にした。茂木は3位指名を受けた15年は、育成を含めた9選手のうち投手が1人だけ。他球団から「偏ったドラフト」と言われようが信念を貫いた。

 教えにも芯が入っている。直球を強振する好球必打。空振り三振を恐れない。“いてまえ”近鉄をルーツに持つ梨田監督が指針を掲げ、浸透させている。2軍戦の前、フリー打撃のラスト2球に「1死三塁」「1死満塁」の状況を設定。転がすのではなく、思い切りかち上げる飛球を打たせてゲームに入る。20日ロッテ戦で、ファームから昇格して初スタメンで決勝本塁打を放ったドラフト3位の田中が好例。迷いなく振れる集団に変貌を遂げた。

 梨田監督は言った。「開幕から先発に不安があったが打線の援護でかみ合ってきた。交流戦は優勝するつもりで」。打てる根拠がある。まず本拠地で巨人。力を披露する。【宮下敬至】