巨人やっと勝った!連敗中阿部が坂本勇に電話で激励

日本ハム対巨人 試合後、連敗を脱し笑顔でハイタッチを交わす坂本勇(中央)ら巨人ナイン(撮影・山崎賢人)

<日本生命セ・パ交流戦:日本ハム1-2巨人>◇9日◇札幌ドーム

 巨人が、ついに屈辱の連敗に終止符を打った。80年を超える歴史で球団ワーストを更新する13連敗を喫していたが、「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム1回戦でストップさせた。2回に古巣対決の石川慎吾外野手(24)が先制適時打。同点の5回には主将の坂本勇人内野手(28)が勝ち越しの適時二塁打を放った。先発のマイルズ・マイコラス投手(28)が8回1失点の好投で接戦を制し、16日ぶりに待望の白星をつかんだ。データ上は優勝確率0%という大失速となったが、名門が再浮上へリスタートを切る。

 巨人が溺れながら、もがき、やっと、ベンチ前に列をつくった。重ね合う手で小気味よい音を響かせる。主将の坂本勇の足取りが軽かった。同点の5回に中越えに決勝適時二塁打を決めた。「うれしいです。素直に」と一呼吸ついた。2試合連続で不慣れな2番に入った。「ランナーがいなきゃ出ないといけないし、いればかえさないといけない。それは1番でも4番でも一緒」。それよりも連敗中は主将としての重責と闘った。

 ここ2試合で4番に座った阿部。大黒柱に変わりはない。8連敗が決まった2日のオリックス戦後の深夜、後輩の心中を察し電話を手に取った。「勇人は絶対に下を向いちゃダメ。責任を背負うタイプだからつらいだろうけど上を向いて明るく貫くのが主将の役割。俺もそうだった」。前主将だから分かる痛みを共有し、視線と気持ちを前へと向けさせた。だから、球団ワーストを更新した12連敗の直後は「申し訳ない」と責任を背負った。大敗濃厚の前日8日西武戦の試合中、坂本勇も円陣の中心で声を張り上げて応えた。

 選手会長の長野の目つきも変わった。自身の不振は言うまでもない。チームが音を立てて崩れていくさまを直視した。8日の西武戦。巨人ファンで埋まった右翼で引き締まった。「ヤジが飛んでくると思った。でも『頑張れ』『俺たちもいる』と声援を送ってくれた。勝たないといけない。勝てばいい。これからです」と全身に力が入った。同時に心底から感情がこみ上げた。

 左太ももにテーピングを施した村田は男だった。交流戦に入ってから3戦連発弾で気を吐いた。6日の西武戦で左太ももを痛めて途中交代も「試合に出られるかどうかじゃない。出るか、出ないか。出る。それだけでしょ」と8日からスタメンで強行した。

 選手だけじゃない。井端コーチは愛読する野村克也氏の本を頭で巡らせ「あれだけ野球のことが書いてあるのに、連敗脱出の方法が書いてない」。監督付の榑松GM補佐は好調だった開幕時の靴に履き替えた。入野サブマネジャーは「そういうのに頼りたくない」と、盛り塩を拒み自力にこだわった。それぞれが、悩み、戦った証しがある。

 負の連鎖が生み出す悪循環を高橋監督はじっと耐えた。8日までの西武3連戦では、メットライフドームの監督室から駐車場までの通路は連日、報道陣でごった返した。フラストレーションを己の中だけに閉じこめた。これほどにも1勝が遠く感じたことがあるのか。「1つ勝つのは大変だなと。でも、勝っても負けても次の日は次の日」と軸は動かさない。歴史的大型連敗で巨人の歴史は動いた。どう動いたかを示すのは、この先の戦いにある。【為田聡史】