日本ハム村田涙、古巣からプロ初勝利「長い道のり」

日本球界初勝利を挙げ、お立ち台で涙ぐむ村田(撮影・黒川智章)

<日本生命セ・パ交流戦:日本ハム5-1巨人>◇11日◇札幌ドーム

 日本ハムが、元G戦士の活躍で快勝した。「日本生命セ・パ交流戦」の巨人3回戦に先発した村田透投手(32)が、5回1失点と好投し、日本球界での初勝利を挙げた。07年に大学・社会人ドラフト1巡目で巨人入団も、1軍登板のないまま戦力外通告を受けていた。同じく巨人ドラフト1位の大田泰示外野手(27)は7回に右翼席へ2試合連発の8号ソロ。古巣を相手にした2人の活躍で、チームは3カードぶりに勝ち越した。

 村田の目には涙が浮かんでいた。初めてのお立ち台での第一声で「やっと来れたというか…」まで話し、言葉を詰まらせた。震える声を絞り出し、インタビューに応えた。左ポケットは、初めて受け取ったウイニングボールで膨らんでいた。「いろいろあった。長い道のりだった。想像はしてたけど、そこは勝てなかった」と、感極まる自分に我慢できなかった。ドラフト指名された日から3482日目での歓喜。栗山監督も「村田のあの言葉を聞いてると良かったなーと思う」と一緒に喜んだ。

 07年大学・社会人ドラフト1巡目で入団した巨人からもぎ取った白星だった。「結果を出してお礼がしたかった」と、感謝の思いと成長した姿を投球で見せた。5回を1失点。新人時代にあこがれた阿部との対戦も実現し、2打席とも打ち取った。巨人時代、1軍登板の機会はなく、3年で戦力外通告を受けた。「この先やっていけるのか。無職になる」と不安だった当時を振り返る。それでも野球を続ける道を探して渡米を決意。マイナーからメジャーデビューまではい上がった意地をぶつけた。

 マイナー生活は過酷だった。もちろん通訳はいない。「野球よりまず英語」と、ベンチでもブルペンでも、メモ帳とペンを常に離さなかった。年下の米国人のルームメートに1日1個、英単語を教えてくれと頼んだ。「『How are you?』の返しは何て言えばいい? ってレベルから」。英語のジョークで笑えるようになると、チームメートともコミュニケーションが取れるようになり、野球にも集中できるようになった。オハイオからボストンまでの13時間のバス移動も耐えた。鍛えられた順応力も武器の1つだ。

 今季31歳でのデビューから7戦目での初勝利。ファンに「オールドルーキーの村田です」と自虐的に自己紹介し、約束した。「まだ1勝目ですが、これから(勝利を)続けられるように頑張ります」。32歳の逆輸入右腕のプロ野球人生が花咲くのはこれからだ。【保坂果那】

 ▼メジャーでプレーした村田がプロ初勝利を挙げた。村田は08~10年の3年間巨人に在籍。メジャーからプロ野球に復帰して初勝利を挙げたのは66年4月12日村上(南海)以来、51年ぶり。62年に南海へ入団した村上は通算3試合、0勝で野球留学のため渡米。64、65年にジャイアンツでプレーし、南海復帰1年目に初勝利を記録した。

 ▼村田は32歳0カ月。プロ初勝利の最年長記録は47年9月28日浜崎(阪急)の45歳9カ月だが、ドラフト制後(66年以降)に入団した投手では00年7月18日柴田(近鉄)の32歳4カ月に次ぎ、97年5月27日野中(ヤクルト)に並ぶ2番目の年長初勝利となった。また、古巣からプロ初勝利は14年4月27日の巨人戦で記録した一岡(広島)以来。