巨人の一員になった山口俊、涙の門出「迷惑掛けた」

巨人移籍後初勝利を挙げた山口俊は涙を流しながらヒーローインタビューに臨む(撮影・井上学)

<日本生命セ・パ交流戦:巨人3-0ソフトバンク>◇14日◇東京ドーム

 巨人に“新星”が加わった。FAで加入した山口俊投手(29)が衝撃のデビューだ。「日本生命セ・パ交流戦」ソフトバンク戦(東京ドーム)でDeNAから移籍後初先発。強力打線を6回まで無安打無得点8三振に封じ、102球で新天地初勝利を挙げた。故障で出遅れ、初先発が交流戦にまでずれ込んだ悔しさを晴らす快投。球団史上初の“ノーヒットノーラン”継投をけん引し、チームを5月24日以来の連勝、6カードぶりの勝ち越しに導いた。

 我慢はもう十分だ。涙腺はもろくも決壊した。山口俊が男泣きした。主将の坂本勇に迎えられるようにお立ち台に上がった。ようやくたどり着いた1軍マウンドで初登板初勝利。「すごく長かったです。勝ててほっとしています…」。天を仰ぎしばらく声すら出せない。「FAで来て、すごく迷惑をかけている。この1勝でジャイアンツの一員として頑張っていきたい」と大歓声にかき消されそうになりながら絞り出した。

 体ごとぶつかった。無安打でこぎつけた6回。四球と犠打で1死二塁。2死後、川崎への2球目の投球動作の途中で右手が足に当たり、ボールがこぼれ落ちた。ボークの判定で2死三塁。四球で一、三塁とされたが、今宮を間一髪の二ゴロに打ち取り、脱した。「見ての通りスピードも落ちていた。アップアップでした」。直後に坂本勇の決勝弾で移籍後初のウイニングボールが転がり込んできた。

 巨人での門出は1軍がはるか遠くに見える日々から始まった。焦りが不安を誘発する。ふがいない現実からの脱却は恐怖との決別だった。1軍登板が内定した先週。「正直、全力で投げているかといったら、自分の中でまだクエスチョン。思い切り投げる、吹っ切れた瞬間は、いまだにない。もう去年の自分には戻れないと思っている」と腹を決めた。右肩の不安が完全に消えることを待つことをやめ「どうしたら現状の自分が通用するのか。そういうところで野球をやっている」と結果だけを直視した。

 野球人生の節目の1勝だった。巨人の一員となった今、古巣にいい顔をすることは、むしろ不誠実だと考える。「活躍しないとDeNAに申し訳ないという気持ちは、ないです。それはまた別。今はジャイアンツの選手。ブーイングしてもらっても構わない。自分を取ってくれたジャイアンツのために結果を出すだけ」。古巣との決別の登板で自らの意思を示した。「FAで来た責任とプライドがある。なんとか前を向いてやってこられた」。存分に暴れるために、ここに来た。【為田聡史】

 ▼巨人が山口俊、マシソン、カミネロの3人でノーヒットノーランを達成。公式戦で継投によるノーヒットノーランは41年6月22日黒鷲、同年8月2日阪急、06年4月15日日本ハムに次いで史上4度目(日本シリーズでは07年第5戦中日が山井、岩瀬で完全試合)。セ・リーグの球団では初めてだ。3投手で達成した06年日本ハムは延長12回の試合で、9回試合では2投手で達成の41年黒鷲と阪急以来、76年ぶり。9回試合で3投手によるノーヒットノーランは初めてだった。