巨人先制許した試合21連敗で止めた!石川サヨナラ

9回裏巨人1死一、三塁、サヨナラの中前適時打を放った代打石川(手前)は、坂本勇(右)らナインに水を掛けられ祝福される

<巨人4-3中日>◇25日◇東京ドーム

 巨人の“野球小僧”がジンクスを打ち破った。石川慎吾外野手(24)が同点の9回1死一、三塁に代打で登場し、プロ6年目で初のサヨナラ打。21打席ぶりのヒットで、先制された試合の連敗を21で止め、3連戦3連敗も阻止した。石川は昨オフに日本ハムからトレードで加入。強打と熱心さがウリの24歳が、伝統球団ならではの競争と重圧に打ち勝ち、大仕事をやってのけた。

 頭が真っ白になった。石川は打球が中前に抜けるのを確認し、両手を大きく広げた。駆け寄る仲間に向き直ると、直立不動のポーズで到着を待った。頭から水をかけられ、もみくちゃにされた。初体験のサヨナラの儀式が心地いい。ユニホームがぬれているのも構わず、高橋監督に抱きついた。「ちょっと興奮しててあまり覚えていない。(自分は)満面の笑みだったと思います」と声を弾ませた。

 劇的な幕切れへの準備は万全だった。4回に先発山口俊が1失点。先制されれば21連敗中という負のデータが石川の頭をよぎったが、備えは怠らなかった。9回にマギーと陽岱鋼の連打で追いつき、なお1死一、三塁。打席に入る時には、頭の中で田島との対決を復習し終えていた。今季は4月14日に遊ゴロ、5月7日は本塁打。いずれも外角勝負だった。「記憶力がいいのは僕の長所。内角に来たらごめんなさいでいきました」。2球連続で来た外角スライダーを仕留めた。

 移籍1年目。巨人は注目度も高く、外野には長野や陽岱鋼らビッグネームがそろう。激しい競争を生き抜くには結果を残し続けるしか道はない。その重圧もあり、外野の定位置をつかみかけた6月上旬、快音が消えた。「このままだと過去の5年と一緒」と、1軍に定着できなかった日本ハム時代の日々がちらついた。

 苦境から救ってくれたのは、少年時代から抱く思いだった。小学校時代は「大工かバキュームカーの運転手」に憧れ、プロ野球選手を意識したのは高3の春だった。「プロじゃなくても、草野球でも、ずっと野球をしていると思うんです。だって好きだから。しんどいこともあるけど好きだから頑張れる。その気持ちは忘れちゃいけない」。結果が出なくても心は折れず、野球が頭から離れることはなかった。坂本勇には足の上げ方や打席内での立ち位置など助言を求めた。二岡打撃コーチとは連日の早出特打。バットを振り続け、不振を振り払った。

 21打席ぶりの安打で連敗を止めた石川に、高橋監督は「結果を残せず苦しいというのはプロ野球選手として当然。苦しい中で久しぶりに結果が出て良かったんじゃないか」と目を細めた。前半戦は残り14試合で、借金は8。石川はヒーローインタビュー後、再びバットを手に室内にこもった。もっとうまくなりたい-。情熱あふれる新しい芽が、巨人を苦境から救っていく。【浜本卓也】

 ▼巨人は代打石川の適時打でサヨナラ勝ち。代打でサヨナラ安打を記録した巨人選手は15年6月3日オリックス戦の井端以来になる。この試合は4回に中日が先制。今季の巨人は先制した試合は23勝7敗、勝率7割6分7厘と強いが、逆に先制されると前日まで6勝31敗、勝率1割6分2厘。先制された試合は5月7日中日戦から21連敗で、この日が7勝目。首位広島は先制試合で24勝、先制された試合でも19勝しているだけに、先制を許した試合の逆転勝ちをもっと増やしていきたい。