楽天松井稼頭央、千金同点打に3年ぶり遊撃で併殺

楽天対オリックス 10回表、二塁の藤田(右)とともに遊撃の守備位置に向かう楽天松井稼(撮影・野上伸悟)

<楽天4-4オリックス>◇26日◇Koboパーク宮城

 ベテランが、攻守で存在感を示した。楽天松井稼頭央外野手(41)が、1点ビハインドの9回2死一、二塁から代打で登場し、同点適時打を放った。延長10回からの守備では14年8月14日以来の遊撃に就き、ミスなくプレー。あわや敗戦のピンチを救う活躍で、引き分けに導いた。

 松井稼が、三塁側ベンチ前でキャッチボールを始めた。延長10回表、守備に就く準備を始めた。見慣れない内野グラブをはめている。ベンチに座るウィーラー、アマダーはその姿を見て楽しそうに笑った。肩慣らしを終えると、軽快な足取りで遊撃の位置に入った。14年以来3年ぶりに見る景色は、いつもと違った。かつて遊撃で4度ゴールデングラブ賞を獲得した名手も「見ている余裕もなかった」と苦笑いだった。

 月曜にもかかわらず、2万4931人が集まったKoboパーク宮城は大盛り上がりを見せる。その期待に応えるように、今年42歳を迎える男が華麗にプレーを披露した。延長11回1死一塁ではゴロを軽快にさばき、二塁手の藤田にトス。遊併殺を完成させ、笑顔でハイタッチを交わした。「緊張したけど、ミスが出なくて良かった」。藤田も「ゲッツーをしたいと思っていた。久々に二遊間を守れて懐かしかった」と堪能した。ファンにとっても、たまらない瞬間だった。

 絶体絶命のピンチで仕事を果たすからこそ、スター選手と呼ばれる。出番は、2点ビハインドの9回だった。代打藤田の打席で振り逃げ暴投で1点差とし、なお2死一、二塁。松井稼は代打で登場した。「みんながつないでくれたので。自分もつなぐ意識で」。オリックスの守護神・平野の外角148キロ直球を左前へはじき返し、土壇場で試合を振り出しに戻した。梨田監督も「なんと言っても、稼頭央だね」と最敬礼するほどの存在感だった。

 前カードの日本ハム戦から試合前に遊撃のシートノックに入るなど、準備を怠らない。若手の茂木が故障で離脱し、遊撃手が手薄な中、打に守に、表に陰に支えている。勝利はならなかった。ただし、勝ちに等しい引き分けといっていい。「守備の方が緊張した」と笑う横顔は、年齢を感じさせないほど、生き生きとしていた。【栗田尚樹】