西武、森コーチ通夜の日に教え子リレーで弔いの白星

6回裏途中、故森投手コーチのユニホームを背にマウンドへ向かう西武2番手の大石(撮影・江口和貴)

<日本ハム4-11西武>◇3日◇東京ドーム

 西武が6月28日に急逝した森慎二投手コーチに、弔いの白星を届けた。同コーチがチームを離れた6月25日から5連敗と苦しんできたが、投手陣が粘りの投球でつなぎ、打線も6月8日巨人戦以来の2ケタ得点と爆発。この日、都内で通夜が営まれた同コーチに、投打がかみ合っての6戦ぶりの勝利をささげた。

 辻監督の目は潤んでいた。森コーチが急逝してから初めてつかんだ白星。「やっと勝ったね。我々は明日、葬儀に出るけど、今日の(ウイニング)ボールを持っていけるのは本当によかった。1つ勝てば選手の気持ちも変わってくる」と安堵(あんど)の表情をみせた。

 投手陣が必死につなぎ、援護を呼び込んだ。先発岡本は初回に先制2ランを浴びながらも立て直した。「どんどん勝負していこうという気持ちを忘れず投げました」。真っ向勝負を挑み続け、6回途中を3失点。森コーチから生前、くぎを刺されたのは「1軍のマウンドに慣れず、常に緊張感を持て。決して逃げるな」。6月7日に昇格し、おごることなく、その言葉を胸に刻み、無傷の3連勝を決めた。

 後を受けた大石も、森コーチの助言を忘れなかった。2点リードの6回2死二塁。かつて、抜けたフォークを相手が打ち損じて抑えた際「ラッキーだなと思わず、もっとたたきつけて投げろ」と指導されたことを思い起こした。「いつも慎二さんに言われていたので。ボールになってもいいと割り切って投げました」。そのフォークで大田を空振り三振に仕留めてみせた。

 ここ4戦の中継ぎ陣の失点合計はわずか2。連敗中も必死につないだ。背景には森コーチからの“伝言”があった。30日のオリックス戦から、本拠地でのリリーフ陣の練習開始時間が、先発陣より30分遅くなった。土肥投手コーチは「暑さが厳しくなる7月の体調面の崩れが(中継ぎ陣の)投球内容につながっていることが数字上も出ていた。何かアクションを起こさないといけないと前々から話し合ってきていた」と明かした。

 中継ぎ陣の疲労を少しでも軽減するにはどうすればいいか。森コーチ、里トレーニングコーチと意見交換して導入した施策。すぐに効果が表れるわけではないが、森コーチの遺志も各自の背中を押していた。

 バックも必死の守りで応えた。7回2死二、三塁。中前への打球を外崎が飛び込んで止め、内野安打での1点にとどめた。抜けていれば試合展開も分からなかった局面。「とにかく必死でした」というプレーが流れを渡さず、9回のダメ押しの5得点につないだ。

 全員野球でつかんだ弔いの白星。天国の森コーチも、満面の笑みでこうたたえたに違いない。「ナイスゲーム!」と。【佐竹実】