オリックス中島直撃「おれ?」5階席から鉄パイプ

落下したパイプがグラウンドではね、中島(中央下)に当たり負傷する(撮影・渦原淳)

 オリックス中島宏之内野手(34)が前代未聞の球場内事故に巻き込まれた。ロッテ14回戦(京セラドーム大阪)の試合前、スポンサー看板の設置作業中だった中堅5階席から落下した角形の鉄パイプの一部が当たったもの。幸いにも打撲で済んだが、1歩間違えれば大けがにつながっていた可能性もあり、球団は対応に追われた。

 中島が険しい顔で恐怖体験を語った。

 「ガランガランと上から音がした。まさか後ろや上から物が飛んでくるとは思わない。他の選手から『危ない』と声がして、立ち上がる間もなく横に逃げた。とっさに手で頭を隠したら、背中に物が落ちてきた。当たったときは『おれ?』と思った。めっちゃ痛かった」

 どこから何が落ちてきたのか、まったく見えていなかった。周囲の警告の声から、わずか2秒ほどの出来事だった。

 事故発生は午前9時40分ごろ。午後1時開始の試合に向けた練習中だった。中島は中堅フェンス手前のグラウンド上で、トレーナーによるストレッチを受けていた。そこに高さ約18メートルの5階席から鉄パイプが落下。うつぶせの状態から、とっさに回避しようとしたが、右耳から左腰にかけて当たった。担架が用意され、グラウンドが騒然となった。

 大型スクリーン下の5階席部分では、発注業者によってゲームスポンサー看板の設置工事が行われていた。その骨組みとなるパイプは、球団発表では長さ約2メートル、重さ約6キロだった。球団事業本部の玉川民平副本部長は「ちょっと手が滑って落ちたということでした。今後こんなことがなきよう、作業のすべてを見直して善処していきます。お騒がせして申し訳ありません」と陳謝。球団は大阪府警西署に通報し、業者への被害届を出すかも含めた今後の対応は「指示に従う」(同副本部長)とした。

 中島はしばらく動けなかったが、立ち上がって自力歩行でベンチ裏へ。試合もベンチ入りしたが出番はなかった。福良監督は「(トレーナー報告で)2、3日は無理というところ。本人はいくと言っていたが」と説明。中島は「病院に行ったら安静にした方がいいと言われた」と残念そうに明かした。打撲で済んだことが不幸中の幸いだった。

<球場での主なトラブル>

 ◆仙台で悲劇 50年5月5日、毎日-南海、毎日-大映のダブルヘッダーが県営宮城球場(現Koboパーク宮城)で開催。試合前、内野席の高さ1・5メートルの金網を乗り越えようと約500人の観衆がつかんだ鉄柵が30メートルにわたり倒れ、死者3人、重軽傷者26人が出た。

 ◆火災発生でノーゲーム 51年8月19日の名古屋-巨人(中日)の3回、バックネット裏の中央スタンド上部から出火。3万5000人の観衆が出火と同時に狭い出入り口に殺到し、死者3人、重傷者89人が出た。観衆の捨てたたばこの吸い殻が原因らしく、試合は3回裏で中止、ノーゲームとなった。

 ◆浸水で試合中止 00年9月12日の中日-広島(ナゴヤドーム)、豪雨で約1400トンの水が流れ込み、グラウンドに浸水して試合中止。