巨人2位畠プロ1勝、小学時代に左から右利きに矯正

中日対巨人 プロ初勝利を飾り、ウイニングボールを手に喜ぶ巨人畠(右)と、祝福する高橋監督(撮影・たえ見朱実)

<中日5-6巨人>◇19日◇ナゴヤドーム

 巨人に新風が吹いた。ドラフト2位ルーキー畠世周投手(23)が、中日15回戦(ナゴヤドーム)でプロ初勝利を挙げた。1回表に阿部の犠飛、陽岱鋼の3号3ランで4点の大量援護を受け、7回1/3を7安打2失点に抑える好投を見せた。山口俊投手(30)が飲酒の上でトラブルを起こした疑いで、前日18日の先発登板を回避したばかり。ショックが続くチームに明るい話題をもたらした。

 けれん味のない投球で勝負を挑んだ。畠が胸元のグラブで力強く弧を描いた。打者に突き出してから、一気に左脇に引き込む。一拍置いて、しなりを利かせた右腕を振り下ろす。中日打線に序盤から140キロ台後半の直球を多投した。「ど真ん中でいいから、しっかりと(直球を)投げてやろう、という気持ちだった」。無心のままに思い切り投げ込んだ。

 こだわった直球が威力を発揮した。初めて得点圏に走者を進めた7回1死一、二塁。藤井を直球2球で追い込むと、3球目はクイックモーションからスライダーで見逃し三振を奪った。6回までストライク先行の強気の投球で、わずか62球でまとめた。逃げずに度胸満点の直球勝負が潮目での変化球を効果的にした。降板後の9回にカミネロが、1点差に迫られるもプロ初勝利をつかみ取った。「絶対に抑えてくれると信じて応援していた」と、デビュー戦だった6日広島戦で逃した念願のウイニングボールを手中に収めた。

 右投げ左打ちの投手。元来は左投げだった。野球を始めた小学時代に両親からの提案でポジションの選択肢を増やすため右投げに矯正した。ただ、小5から投手一筋。結果的に左利きのままでよかったのでは、と何度も問われた。その度に「右投げにしたおかげで、僕は左も同じように使える。それが今に生きている」と肯定してきた。豊田2軍投手コーチも「今の若い選手は左手をしっかり使う選手が少ない。バランスよく投げた時にはすごい球がいく」と長所として捉える。

 前夜の試合前に山口俊がトラブルを起こした疑いがあるという衝撃的なニュースが飛び込んできた。ただ、ペナントレースは続く。立ち止まるわけにはいかない。畠にも「暗い雰囲気をはねのけるような投球をしたかったです」と胸にとどめた気持ちをマウンドで体現。チームも4カード連続の勝ち越しを決めた。高橋監督は「当然、今日良かったんだから次も投げるでしょう」と次回登板を確約した。若き力による新風は、何事にも代え難い相乗効果を生む。【為田聡史】

<畠世周(はたけ・せいしゅう)アラカルト>

 ◆出身 1994年(平6)5月31日、広島・呉市生まれ

 ◆経歴 川尻小3年から「川尻ヤングパワーズ」で野球を始める。川尻中では軟式野球部。近大広島高福山ではエースとして3年夏に広島大会16強。甲子園出場経験なし。近大では2年春にリーグ戦デビュー。3年秋に6勝4完封、リーグタイ記録の3連続完封勝利

 ◆名前の由来 父の英彰さんが「世の中が自分のいい方に周るように」と命名

 ◆憧れの選手 桑田真澄

 ◆趣味 海釣り。瀬戸内海で、太刀魚など数々の大物をゲットした。六面立体パズルも得意。小学校6年時にはそろばん1級レベルに到達

 ◆読書家 入寮時には兵法書の「孫子の兵法」を持参。黒田博樹の「決めて断つ」なども読破

 ◆登場曲 RADWIMPS「Zenzenzense」

 ◆サイズ 186センチ、78キロ

 ◆血液型 AB