ヤクルト0-10から史上最大の逆転「選手の意地」

ヤクルト対中日 10回裏ヤクルト1死、サヨナラ本塁打を放ちナインの輪に飛び込む大松(撮影・河野匠)

<ヤクルト11-10中日>◇26日◇神宮

 歴史的な大逆転勝利だ。ヤクルトが中日戦でプロ野球タイ記録となる10点差をはねのけ、勝利した。7回表終了時に0-10で敗戦ムード濃厚だったが、7回に2点を返し、8回には打者一巡の猛攻で8点を挙げて同点。最後は延長10回に大松尚逸内野手(35)が右中間席へサヨナラソロを突き刺した。セ・リーグでは1951年以来66年ぶりの逆転劇。チーム一丸となって6月30日以来約1カ月ぶりの連勝をもぎ取り、自力CS消滅も防いだ。

 勝利を信じた思いが打球に乗った。10回1死走者なし。代打大松は中日伊藤の初球、147キロ直球を完璧にとらえた。「ライトスタンドのファンのみなさんの声援で伸びてくれと思っていました」。白球は小雨を切り裂き、高々と上がる。そのままヤクルトファンが総立ちで待つ右中間席へ突き刺さった。10点差をはねのける大逆転劇。「みんなの気持ちが最後にいい形でつながって良かった」と渡されたバトンを一振りで勝利に結びつけた。

 プロの意地が奇跡を引き起こした。5回終了時で0-10。敗戦ムードが色濃く漂った。だが、神宮は2万8654人の満員。多くのファンが見守る中、一方的に負けられないと三木ヘッドコーチが6回裏が始まる前に円陣を組んだ。「苦しい状況なのは間違いない。でも1点、1点を返していこう。ウチらしい戦いをしよう」。奮起させる言葉が打線に火をつけた。

 7回に中村が2ランを放ち、2-10。8回、3番バレンティンが無死一塁から2ランを放ち、6点差とすると止まらなかった。1死満塁から上田の犠飛で5点差。2死一、二塁から中村、坂口、山崎と3者連続の適時打で2点差に迫ると、続くバレンティンが四球で2死満塁。4番山田が左前へ2点適時打を放って、試合を振り出しに戻した。真中監督は「三木が円陣を組んでこのままじゃ終われないと。選手の意地を感じました」と勢いをほめた。

 試合を決めたのはベテラン大松だった。ベンチでは誰よりも声を出し、試合後には素振りを黙々と繰り返した。荒木ら若手も練習を続ける大松を見て、自発的に「大松塾」に参加。声でも背中でもチームをけん引していた。この日も「真っすぐが多くなっていた。攻め方を頭に入れて打席に入った」と準備は万全。本塁打は必然の結果だった。

 若手がつなぎ、最後はベテランが決める。66年ぶりの大逆転劇に真中監督は「まさか追いついて、ひっくり返すとは。今年は悪い記録の更新ばっかりだったんで、いい記録が出て良かった」と笑った。勝利をもぎとったきっかけは応援し続けるファンの声援。借金26、最下位に沈むチームの浮上を願う声が燕を浮上させる。【島根純】

 ▼ヤクルトがスコア0-10から大逆転勝ち。10点差逆転勝ちは近鉄が97年8月24日ロッテ戦で記録して以来、20年ぶり4度目のプロ野球タイ記録。セ・リーグでは51年5月19日大洋戦の松竹以来、66年ぶり2度目となった。