巨人菅野11勝、防御率、勝利数1位「諦めない」

ピカチュウに背中を押されながら笑顔でお立ち台へと向かう巨人菅野(撮影・足立雅史)

<巨人5-1DeNA>◇29日◇東京ドーム

 完璧エースが両リーグトップの11勝目をつかんだ。巨人菅野智之投手(27)がDeNAを8回1失点と抑え込み、セ・リーグの勝利数と防御率1位の座を守った。7月の登板では29イニング目の8回に今月初失点したものの125球の熱投で追加点を許さなかった。防御率は1・99と、1点台に突入。投球に加え打撃にも妥協しない姿で、攻守に他球団エースの追随を許さぬ独走を続ける。

 考えるよりも先に体が動いていた。マウンド上の話ではない。5点リードの7回無死走者なし。右打席の菅野が歯を食いしばり、平田の外角スライダーをたたきつぶした。中堅を大飛球が襲う。桑原の背走キャッチに阻まれたが、大歓声で東京ドームを揺らしまくった。「普通に打ちました。普通です。2ストライクになれば三振も考えましたが」と迷わず振り抜いた。大量リードで完封ペースの終盤。先頭打者の先発投手が必死の形相で変化球に食らいつき、4万4000観衆の心を大きく動かした。

 全てに最善を尽くす意識が体の芯に刻まれている。今季、30以上の打席に立った先発投手で最も三振が少ない。42打席の9三振は、2位の広島野村の32打席10三振と比較すれば三振率で約1割の差がある。そこには明確な意図が存在する。

 菅野 今年は、とにかく三振しないようにしているんですよ。バントも失敗したくない。ピッチャーが簡単に三振するなら8番との勝負が楽になってしまう。それがチームのためになるし、自分にも返ってくる。

 今季は打率2割5分7厘を記録し、犠打は5企画で1度も失敗がない。投球以外にもチームに貢献できる方法がある。だからこそ終盤もバットが自然に出た。

 8回1死一、三塁からロペスの打席で低めスライダーを暴投し、月間無失点記録が途絶えた。それでも、全てに完璧とはいかない現実を受け入れ、ロペスから151キロ直球で空振り三振を奪った。「記録はバリバリに意識していた。あの後を抑えられたことがキーポイント」。最少失点で切り抜けて反撃の芽を断った。

 3位チームを2週連続で圧倒した意義は大きい。お立ち台で「僕は諦めていません。勝負の8月、9月。全力で戦い抜きます」と語気を強めた。大局を動かすだけの存在感が、今の菅野にはある。【松本岳志】

 ▼菅野が8回1失点で11勝目。7月の菅野は4勝0敗、29イニングを投げ失点1、自責点1の防御率0・31となり、月間4勝は14年4月に次いで2度目だ。菅野は16年4月に33イニングで失点1、自責点0の防御率0・00をマーク。この試合に完封していれば、2リーグ制後初めての2度目の月間防御率0・00(30イニング以上)となっただけに、暴投で失った8回の1点が惜しかった。