広島新井躍動、ドロー呼ぶ激闘打 今日こそM点灯だ

9回裏広島無死、新井は二塁内野安打を放つ(撮影・梅根麻紀)

<広島5-5阪神>◇3日◇マツダスタジアム

 広島が、初回4点ビハインドから引き分けに持ち込んだ。3点を追う9回、代打松山、西川の連続適時打で追い付き、救援陣も無失点リレーで応えた。初回に反撃の適時打、9回は先頭で出塁した新井貴浩内野手(40)が、あきらめないチームの姿勢を体現。今日4日、DeNAに敵地で勝てば、連覇への優勝マジックが点灯する。

 引き分けても、しぶとさあふれる試合だった。真夏の夜に、頼れるベテランは要所で輝いた。3試合ぶりスタメン出場の新井が、延長12回の激闘の先頭に立ち続けた。

 40歳の集中力がバットに充電された。窮地に立たされた9回、先頭としてしぶとく、二塁内野安打として出塁。ベテランの一打に反撃ムードが高まり、土壇場の同点劇を演出した。3万1330人が詰めかけたスタンドが、大歓声に包まれ赤い波がうねった。

 反撃ののろしも新井だった。いきなり4点の大量失点を負った直後の1回、外角球を右前にはじき返す適時打で1点を返し、チームの士気を高めていた。

 前日の敗戦からマジック点灯の先にある連覇へ向けて、再出発を切った。だが、滑り出しでつまずいた。先発九里が1回に4失点の大乱調。勢いがそがれる投球にも、ベテランの集中力は途切れなかった。「取られた後すぐに1点返すことが出来て良かったです」。反発力が首位独走チームの強みだ。

 代打での出場が増えても、ベテランの存在感は変わらない。鈴木ら若い選手が助言を求め、ベンチでは誰よりも声を出す。11回2死二塁から白浜の左前打には思わずベンチを飛び出すほど。春季キャンプ中に後輩との会食時に伝えた「チームとしてやるべきこと」を率先して示している。ベンチやグラウンドでの立ち居振る舞いだけでなく、1点のための進塁打や次の塁を狙う積極的な走塁も、ベテランの姿に若手が学び、チームに浸透している。ベテラン新井には、有形無形の存在価値がある。

 延長12回の末に引き分けに終わったが、あらためて広島の粘り強さを見せつける試合でもあった。