西武止まらない13連勝 58年西鉄以来59年ぶり

13連勝を祝うボードを背にバンザイする中村(左)と野上(撮影・松本俊)

<西武8-4ソフトバンク>◇4日◇メットライフドーム

 赤い獅子の勢いは鷹にも止められなかった。西武が中村剛也内野手(33)の24号ソロを含む3安打2打点の活躍でソフトバンクに勝利。この1発で本拠地メットライフドームでの本塁打を歴代最多の169本とした。チームは辻発彦監督(58)が生まれた年の1958年以来、59年ぶりの13連勝。7月19日時点で11あった首位とのゲーム差は、一気に5・5。大逆転Vが、いよいよ視界に入ってきた。

 これぞ4番のひと振りだった。1点差で迎えた7回。中村は力みのないスイングでチェンジアップを完璧にとらえた。左翼席中段にたたき込む24号ソロ。この回一挙4得点を挙げる口火の1発に「(本塁打を)狙ったわけではないけど、いい打撃が出来た。勝ててよかった」とうなずいた。

 7月27日オリックス戦以来、29打席ぶりのアーチ。チームが大型連勝の中、本来の打撃は影を潜めていた。安打も直前2カードでわずか1本。不振脱却へ、7月下旬の試合前練習から右手の革手袋を外して振り込んだ。「ゆっくりと振りたかったんで。余計な力が入らないようにです」。もともと、利き手の右手は緩く握り「ボールを捉えるためだけに使うイメージ」。そこに知らぬ間に生じていたバットをこねるような力み。素手での練習は不必要な力を抜くための策だった。

 徐々に取り戻した本来の打撃。力が一切入っていないようなスイングでの、らしい打球が確実に増えた。この日の練習から右手に革手袋が戻った。試合前、辻監督に「打ちますよ」と誓ったのは、手応えの裏付けがあった。

 その宣言通り、勝負どころで打った。先制の適時二塁打を含む今季初の猛打賞もマーク。「遅いです」と振り返ったが、辻監督の信頼は揺らいでいなかった。「ここまでたとえ結果が出ていなくても、こういう試合で打ってくれる。4番ですよ」。そして「今日は中村。ピリピリした展開の中で(7回の)ホームランが一番うれしかった」と手放しでたたえた。

 前回13連勝目を挙げた58年10月2日は、前身の西鉄がリーグ3連覇を決めた日。首位南海との最大11ゲーム差をまくってペナントをつかんだ。この日の勝利で今季、首位とあった最大11の差は5・5までつめた。中村は「チームはすごくいい雰囲気。勝てると思って戦えている」と力を込めた。果たして大逆転の歴史は繰り返せるか。頼もしい4番は、ただ勝利のためにバットを振る。【佐竹実】

 ▼西武が7月21日日本ハム戦から13連勝。パ・リーグで13連勝以上は、16年日本ハムの15連勝以来で14度目。西武では西鉄時代の58年9月14日~10月2日の13連勝以来で、59年ぶり3度目になる。58年の西鉄は先発7勝、救援6勝で13連勝したが、今回の13連勝は先発12勝。連勝期間中は先発投手の防御率が2・25で、救援投手は同1・70。先発陣が試合をつくり、救援陣がリードを守りきる展開が続いている。

 ▼西武は13連勝で勝率が6割2厘となり、6月11日以来の勝率6割以上。パ・リーグで90試合以上を消化して3チームが勝率6割以上は、55年南海、西鉄、毎日、56年南海、西鉄、阪急、61年南海、西鉄、東映、06年日本ハム、西武、ソフトバンクに次いで5度目と、ハイレベルな争いとなっている。

 ◆58年の西鉄 首位南海を猛追し、終盤に13連勝。残り50試合時の7月24日にあった11ゲーム差を逆転して優勝した。巨人との日本シリーズでも3連敗から4連勝する大逆転で、原動力となった稲尾は「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれた。