巨人阿部、内角攻めに投手強襲打 2000安打M3

7回裏巨人無死、阿部は投手強襲の内野安打を放つ。投手メッセンジャー(撮影・山崎安昭)

<巨人5-2阪神>◇10日◇東京ドーム

 さあ、一気に駆け抜けろ! 巨人阿部慎之助内野手(38)が阪神16回戦(東京ドーム)の7回、投手強襲の内野安打を放った。メッセンジャーの150キロ直球を打ち返す通算1997安打目。打球は好投していた同投手の足を直撃し、降板を余儀なくさせた。劣勢だったチームは、これをきっかけに息を吹き返し、逆転勝ちした。大記録まで残り3本とした主砲が、敵地広島に乗り込む。

 目いっぱい腕を振って、全力疾走で駆け抜けた。同点の7回無死、阿部が先頭で打席に入った。カウント1-1からの3球目。メッセンジャーの150キロ直球にバットを振り下ろした。やや先で捉えた強烈な打球は、相手投手の右足首を襲った。前だけを見て、27・4312メートルを走り抜き、投手強襲の内野安打で出塁した。

 勝負師の本能が打球に乗り移った。「相手バッテリーに厳しいところ攻められている。今年だけでも何回もひっくり返されている」。打席に入れば主軸中の主軸だけに厳しく攻められる。6月18日のロッテ戦でも顔面付近のボールをよけようと打席で倒れ込み右膝を負傷。登録抹消を強いられた。ただ、強打者としての勲章だと自認する。「こういう攻め方をされなくなったら、打者としては終わり。その中で打った、打たれたという戦いがある」と早期復帰の糧にした。

 前日9日も阪神青柳に内角を攻められ、右脇腹に死球を受けた。患部は痛々しく腫れ上がるも「大丈夫」と一言だけ。さらに、この日の2打席目も、2死三塁の好機で初球は内角の胸元を攻められ、のけ反った。「やられっぱなしじゃダメ。勝負なんだから」。次打席での投手強襲は反攻の一打でもあった。わずか4安打と好投していたメッセンジャーを右足首直撃打で“KO”してみせた。

 2戦ぶりの安打は今季3本目、プロ通算75本目の内野安打で大台まで残り3本と迫った。「2000安打を達成した人の中で、俺が一番、内野安打が少ないと思うよ」。技術とパワーを融合させ、外野まで飛ばす打撃で勝負してきた。これもまた好打者の勲章として光る。

 ラッキーな内野安打ではない。勝負の妙を知る主砲が必然的に生み出した一打が、相手投手陣の攻略につながった。鮮やかな逆転勝ちで2位阪神との3連戦の勝ち越しに成功。大記録達成の舞台は広島へと移る。「1位のチームとだから、なんとか勝ち越せるように」と阿部。真っ赤に染まるマツダスタジアムで最後のカウントダウンに入る。【為田聡史】