サヨナラ打の楽天銀次、枡田のユニでお立ち台の理由

試合後、楽天銀次はユニホームが濡れたため枡田のものを借りて場内1周しスタンドの声援に応える(撮影・黒川智章)

<楽天4-3日本ハム>◇10日◇Koboパーク宮城

 銀チャン&慎ちゃんの熱い友情が、執念のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。楽天銀次内野手(29)が延長11回1死一、二塁から左中間へサヨナラ二塁打を放ち、チームの首位を守った。お立ち台では同学年の枡田慎太郎内野手(30)のユニホームを着て登場。出番のなかった友の思いも背負い、バットとユニホームに魂を込めた。

 銀次のユニホームは、真っさらだった。泥ひとつ付いていない。ぬれてもいなかった。背番号は自身の「33」ではなく枡田の「32」と記されている。数分前とは違う。延長11回1死一、二塁から、1年ぶり3度目のサヨナラ打を放ち、グラウンド上で仲間から祝福のシャワーを浴びせられていた。お立ち台で説明した。

 銀次 今日の朝、(枡田)慎太郎から『楽天の2番、ちゃんとやってな。頼むで』と言われて。彼から借りました。僕のはビショビショだったので、慎太郎が『これ着ていけば』と言ってくれました。慎太郎、やったぞ!

 同期入団、同学年の枡田のユニホームをあえて着用した。ビショビショ…だけが、理由ではない。4時間24分という過酷な試合。足立、細川の捕手を除けば、枡田1人が野手で出番がなかった。銀次と枡田は05年高校生ドラフト3、4巡目コンビで、ともに左打ち。銀次は「もちろん、慎太郎も試合に出たいのは当たり前。僕も一緒に出たい。そう思いながらユニホームを着ていました」と、しみじみ語った。枡田は「俺は試合に出ていないし、汚れていないからさ」と言ったが、その顔は笑っていた。

 銀次は2-3の7回2死三塁でも中前へ同点打を放っていた。9回にも右前打をマークし、約1カ月ぶりの3安打猛打賞と枡田から言われた「2番」としての務めを果たした。「最後は自分が決めるつもりだった。でも、打席では思ったよりも冷静になれた。これが経験だと思う」と胸を張った。

 今度は2人でお立ち台に上がりたい-。銀次は「最近は2人で、ご飯に行けていないんですけど。新人のころとか、よくラーメン食いに行ってましたね。しょうゆ味か、忘れてしまったけど、また2人で食いに行きたい。懐かしいですね」。今年で30歳を迎える男の熱い友情が垣間見えた。【栗田尚樹】