元ロッテJrの楽天藤平「好きな球場」で高卒1番星

プロ初勝利を飾った楽天藤平(右)は梨田監督から祝福され、笑顔で握手する(撮影・たえ見朱実)

<ロッテ2-6楽天>◇22日◇ZOZOマリン

 18歳のルーキーがチームを救った。楽天のドラフト1位、藤平尚真投手がロッテ戦で5回を無失点に抑え、プロ初勝利を挙げた。3度目の先発で手にした白星は、今季の高卒新人投手一番乗り。千葉出身で、幼少期からなじみのあるZOZOマリンで毎回の7三振を奪う2安打投球を披露。前週全敗だったチームの連敗を6で止めた。

 これぞスターだ。一生に1度のプロ初勝利を、これ以上ない場面で決めた。ヒーローインタビューに立った楽天藤平は背筋をピンと伸ばして言った。「チームの連敗が続いていた。それを止めようという気持ちでした。チームが勝てたのが一番。本当にうれしい」。りりしい表情を崩さず、ルーキーらしからぬ頼もしい言葉を並べた。

 今季ワースト6連敗中の空気を一新した。千葉出身、小6時にはロッテのマリーンズジュニアに所属したこともある。「すごく好きな球場」というZOZOマリンで、特有の浜風を逆手に取った。上ずる直球はつり球に使った。変化球は丁寧に低めに。毎回の7奪三振、四球1つの安定した内容で、スコアボードに5つのゼロを刻んだ。

 飽きっぽい藤平少年が、飽きなかったのが野球だった。習字、剣道、空手にピアノ…。習い事を体験してもすぐにやめた。しかし投手への情熱は絶えなかった。楽天入寮時には「田中さんのような選手になりたい」。かつてヤンキース田中が住んだ部屋で青写真を描いた。高卒新人最速白星は、大エースへと続く長い道のりのスタート地点にふさわしい。

 甲子園では今、高校球児たちが日本一をかけて戦っている。たった1年前まで、藤平もそこに立っていた。梨田監督は「まさか高校出て1年目の藤平くんに、連敗ストッパーになってもらうとは」と若き救世主に感謝した。

 先発三度目の正直でつかんだウイニングボールは、観戦に訪れた両親に贈る。「今日は応援に来られなかった楽天ファンの方もたくさんいる。次はKoboパーク(宮城)で、しっかり勝利を挙げたいです」。視力2・0の瞳には、これから描く成長曲線がクリアに映っている。【鎌田良美】

 ▼藤平がプロ初勝利。今季の高卒新人で白星を挙げたのは初めてで、楽天の高卒新人勝利は15年安楽以来5人目。登板3試合目で初勝利は07年田中の4試合目、14年松井裕の8試合目より早かった。楽天はチームの連敗が6でストップ。楽天の高卒新人がチームの6連敗以上を止めたのは14年8月13日松井裕に次いで2人目だが、この時の松井裕がプロ2勝目に対し、藤平はプロ初勝利で6連敗を止めた。また、楽天の新人で白星を挙げたのは高梨、森原、菅原に次いで今季4人目となり、楽天の新人4人が勝利は14年に並び最多。