阪神糸井の初サヨナラ弾で自力V復活「やりました」

10回裏阪神2死、サヨナラ本塁打の糸井はバンザイしながら歓喜の生還(撮影・河南真一)

<阪神4-3ヤクルト>◇30日◇甲子園

 糸井でまた、また、また自力V復活や! 阪神糸井嘉男外野手(36)がプロ14年目で初のサヨナラ弾を放った。同点の延長10回。近藤の148キロ真っすぐを右中間席中段までカッ飛ばす特大アーチだ。お立ち台で左手を突き上げ「やりましたー!」と絶叫した姿が頼もしい。首位広島が敗れてその差は6・5に縮まり、今季3度目の自力Vが復活。きっと大逆転優勝できる…。超人が夢を運んだ。

 どれだけ飛ばすんや…。大声援に包まれた白球が甲子園の夜空に舞った。3-3の延長10回。決めたのは糸井だ。2死走者なし。昨季までオリックスで同僚だった近藤の外角148キロをフルスイングした。黒いバットを放り投げて見つめた先は、右中間スタンド中段だ。12号ソロは自身初のサヨナラ弾。打った本人も胸の高鳴りを抑えられない。

 糸井 しっかり強いスイングをしようと、それだけだった。甲子園でサヨナラホームラン打てて、最高の気分です。

 夢のような景色だった。総立ちのスタンドの声援を独り占めすると、本塁付近にはナインが水を抱えて待っていた。ベースを踏むと、もうもみくちゃ。歓喜のシャワーで水浸しだ。ベンチ前の金本監督と熱く抱擁。指揮官から「これがスーパーベジータか!」と、糸井が大好きなドラゴンボールの人気キャラクターを引き合いに絶賛された。

 金本監督 ものすごい当たりでしたね。どこまで飛ばすのか、という当たりを見せてくれた。

 金本監督が「初めての恋人」とラブコールを送ったFA戦士がチームを再加速させた。球宴明け直後に右脇腹筋挫傷を負ったが8月17日広島戦から1軍復帰。翌18日中日戦からスタメン復帰したが、そこから11試合連続安打をマーク。チームも8勝3敗と上げ潮ムード。秋風を吹き飛ばすような虎進撃の原動力は間違いなく背番号7だ。

 一流打者は道具へのこだわりも一流だ。特に「相棒」であるバットは肌身離さず携える。それだけバットへの思い入れは強い。ホームラン打者の使用するバットにも興味が強く、春先には業者にお願いしてジャイアンツなどで活躍したバリー・ボンズが使用していた同型のバットを作ってもらったこともあった。オリックス時代の後輩である吉田正と同型のバットで練習したこともあった。

 糸井 1試合も落とせないと思って戦っていきます。

 首位広島が敗れて6・5差に縮まり、阪神の自力Vが復活。金本監督は「もういい、毎回毎回」と、その話題を笑い飛ばした。でもあの放物線を見れば、虎党も夢を抱く。【桝井聡】

 ▼糸井が延長10回にサヨナラ本塁打。サヨナラ安打は日本ハム時代の10年に2本あるが、サヨナラ本塁打はプロ入り初めてだ。糸井の本塁打は通算137本目となったが、過去に「サヨナラ」だけでなく、「満塁」と「代打」もなし。通算100本塁打以上の打者で、サヨナラ、満塁、代打の3種類の本塁打が1本もないのは糸井とクルーズ(日本ハム=通算120本)だけだった。