広島会沢、胃がん復帰目指す赤松誕生日サヨナラV打

11回裏広島1死二塁、サヨナラ打の会沢(右)はナインの祝福を受けガッツポーズ(撮影・栗木一考)

<広島4-3阪神>◇6日◇マツダスタジアム

 2夜連続でサヨナラじゃ~! 広島が延長11回の死闘をサヨナラ勝ちで飾った。試合を決めたのは気合満点の会沢翼捕手(29)だ。延長11回1死二塁から高めの直球を右中間に運んだ。この日、35歳の誕生日を迎えた、胃がんからの復帰を目指す赤松真人外野手にウイニングボールを渡すことも明言。優勝へのマジックは一気に10まで減らし、勢いのまま一丸で進む。

 勝負を決する2球前。体の前を通るボールを、会沢は転げながらよけた。だが茨城・水戸短大付時代に短ランボンタンで慣らした男は「内角は(死球を)もらえばいい」と恐れない。そして7球目。再び思い切り踏み込んだ。外角の150キロをジャストミート。打球は右翼糸井の頭上を越えた。二塁手前で仁王立ち。歓喜の水を全身で浴びた。

 逃げない、恐れない。今季すでに受けた3戦連続を含む6死球からだけではない。不振や、配球に対する批判の声。置かれた状況すべてに立ち向かう。「ストレスは現代人がつくった都合のいい言葉」と笑顔で言う。さらに独特の表現で「戦国時代にストレスなんて言葉はない。そんなヤツはすぐに斬られる。生きるか、死ぬか。その世界にストレスは関係ない」と続ける。覚悟を決めて立ち向かい、阪神石崎を斬ってみせた。

 一方で、会沢の心の大半を占めるのは「優しさ」だ。この日は胃がんからの復帰を目指す赤松の35歳の誕生日。外野から戻ってきたウイニングボールを右ポケットにしまった。「赤松さんに渡します。僕らが頑張っている姿で勇気づけられれば。僕らは仲間。一緒に戦っている」と照れくさそうに明かした。選手会副会長としてチームをまとめる役割も背負っている。歓喜の輪が大きく、祝福が激しかったのは、必然だろう。

 まさに球場全体に報いた一打。チームは3点を追う8回に4安打を集中させて3得点。一気に同点に追いついた。中継ぎ投手が踏ん張り、ベンチ入りの野手は石原以外を使い切る死闘だった。緒方監督は「本当にすごい試合」と目を丸くし「執念、気持ちで追いついて、2日続けてサヨナラ勝利。選手の頑張りは大したもの」と評価した。優勝へのマジックは一気に10に減った。風は広島に吹いている。【池本泰尚】