広島田中「1番遊撃」へのこだわり先頭打者弾でM2

広島対DeNA 1回裏広島無死、左越えにソロ本塁打を放つ田中(撮影・上田博志)

 切り込み隊長が流れをつくった! 広島田中広輔内野手(28)が2点を追う1回に先頭打者本塁打を放ち、打線を勢いづけた。その後もセンター返しあり、絶妙なバントヒットありと打線を活性化させた。5試合ぶり安打、1カ月ぶり猛打賞のトップバッターに引っ張られるように、優勝マジックは2となった。今日14日にも連覇が決まる。頂点まであと1歩だ。

 描いたアーチが打線を勢いづけた。2点を先制された直後の1回裏。1番田中が、DeNA先発飯塚の3-1から浮いた真っすぐをたたいた。打球は風にも乗って左翼席最前列へ。田中にとって5試合ぶりの安打が反撃の号砲となり、打者一巡の猛攻につながった。

 「カウントが有利になったので思い切り振っていこうと思った。ほかの選手が打っている中、打てていなかった。僕が打っていれば勝てた試合もあった」

 切り込み隊長としての役割を果たした。1回に再び巡ってきた2打席目は2死満塁。今度はコンパクトに中堅にはじき返し、2打点をもぎとった。ジワリジワリと点差を縮められた6回、今度は投手と一塁の間へ絶妙なセーフティーバントを決めて、この日2度目の打者一巡を呼んだ。

 フルイニング出場を続けながら、この日も早出練習に参加した。昨季終盤に腰を痛めたときには緒方監督から「もういいぞ。明日も試合に出てもらうから、明日に備えろ」と声をかけられたが、「出ます」と答えた。「僕に委ねられたので、出るに決まっている」。レギュラーにこだわり、フルイニング出場にこだわった。

 ポジションは与えられるものではない。首脳陣からは「昨季と同じくらいの成績なら代えることもある」と言われていた。この日3安打で昨季に並ぶ154安打とした。打点と盗塁はすでに昨季を上回り、打率と得点も自分超えペース。自らの力で「1番遊撃」の聖域を確固たるものとした。

 阪神が敗れ、マジックは一気に2つ減った。今日14日にも優勝が決まる。緒方監督は「とりあえず明日、勝たないとゴールテープは切れない。まずは勝つことが条件なので、明日も気持ちが変わることなく、我々がやってきた野球をやるだけです」。本拠地のファンとともに迎える、歓喜の瞬間はもうすぐだ。【前原淳】