西武菊池15勝、球団左腕では93年の工藤公康以来

5回裏楽天1死満塁、銀次を併殺打に打ち取り、ほえながらガッツポーズを決める菊池(撮影・狩俣裕三)

 投げ勝った。西武菊池雄星投手(26)が8回4安打1失点(自責0)の快投で3位楽天を下した。昨季までの同僚岸との初の投げ合いを制し、球団左腕では93年工藤公康以来となる15勝目。11三振を奪い、松坂大輔に並ぶ球団最多タイのシーズン10度目の2ケタ奪三振も決めた。昨年から続く自身の楽天戦連勝を10に伸ばし、チームも引き分けを挟んで同戦10連勝。左腕が堂々たるマウンドさばきをみせた。

 心地よい疲れだった。菊池の表情には充実感がにじんだ。初めての岸との投げ合い。8回を最少失点に抑えて、チームに白星をもたらした。「今年一番のプレッシャーがありましたが、こういう試合で勝てた。自分でも少し褒めてあげたい。本当に楽しかった」とほんの少し、ほおを緩めた。

 その背中を追いかけてきた。1年目の10年。すでに先発ローテを担っていた岸の第一印象は「すごく静かな人」だった。自身は周囲の期待とは裏腹に結果を出せない日々。先輩右腕に話し掛けることも出来なかったが2年目のオフ、声をかけられた。「『友達になろうよ。ため口でいいよ』って言ってもらって。本当に、すごくうれしかった」。この年から自主トレに同行。投手としてはもちろん、やさしい、仲間思いの人柄が目標になった。

 「尊敬する友達」の存在が、ここまでの成長を後押ししてくれた。今でも心に刻むのは「自分の役割を果たそう」という助言。「自分はどうしても勝ち負けとか、数字を気にしてしまっていた。そういう気持ちの波がある姿を見て、1年間投げるために必要な意識を、教えてくれたと思う」。

 まだまだ追いついたという気持ちはない。岸にあって、菊池に足りないもの。「安心感です。自分には全然ない」。2ケタ勝利は昨季からの2年だけ。シーズンを投げきったこともない。だからこそ、この日も「勝ち星とかは運もあるので気にしない。とにかく1年間投げきる。そこだけです」。リーグトップの201奪三振にも「(三振は)取りたい時に取れればいい。チームが勝つことだけを意識したい」と言い切った。

 岸との息詰まる投手戦。珍しく9回の続投判断を首脳陣に委ねた。「8回が終わって疲れも出ていた。あらためて、すごく集中していたんだな、と思いました」。役割は、投げた全ての試合でチームを勝たせること。自身初のクライマックス・シリーズ、そしてその先へ-。負けられない試合で勝ち続ける。【佐竹実】

 ▼西武菊池が今季10度目の2桁奪三振で自身初のシーズン200奪三振に到達した。西武のシーズン2桁奪三振10度は03、06年の松坂に並ぶ球団最多タイ。西武の200奪三振以上は06年松坂(200個)以来で、球団の左投手では西鉄時代の60年畑隆幸(219個)以来となった。