鈴木誠也は来季最強復活へV旅行「行ってられない」

自らビールを浴びる鈴木

 関係者の肩を借りながら胴上げの輪に加わった広島鈴木誠也外野手(23)が18日、スケールアップして来季復活することを誓った。4月途中から4番を務めてきたが、8月23日DeNA戦(横浜)で右足首を骨折し、戦線を離脱。この日グラウンドで優勝の瞬間を迎えることはできなかった。オフの優勝旅行には参加せず、治療に専念する意向で「最強になって帰ってきます」と約束した。

 勢いよくグラウンドに飛び出すナインから遅れて、鈴木が歓喜の輪に加わった。球団スタッフの肩を借り、右足をギプスで固定したままマウンド付近へ。頭をたたかれながら迎えられ、照れくさそうにチームメートと再会。連覇の喜びもあって、思わず表情を緩めた。そこに4番の重責を背負った鬼の形相はなかった。

 「ケガをしたにもかかわらず、この場に立ち会えたことに感謝したいです。2連覇できたことは素直にうれしいですが、大事な時期に離脱してチームに迷惑をかけてしまいました。自分自身も悔しい思いが残るシーズンになりました」

 8月23日DeNA戦が、自身の今季最終戦となった。あの日、鈴木は天国から地獄へ突き落とされた。

 左翼へ伸びる弾道に、胸の中を支配していたモヤモヤが晴れた。「これだ!」。1回。ウィーランドの内角真っすぐに詰まりながらもバットが振り抜けた。26号ソロ。「今年初めての感覚。やっといい感覚で振れた。ホッとした。これでシーズン乗り切れると」。2回、第2打席の右飛も納得の形。トンネルを抜ける、確かな光が差した。

 だが直後の2回裏、右翼へ伸びる飛球が鈴木のシーズンを終わらせた。背走しながらジャンプキャッチ。着地した瞬間「ぶちぶち」と何かが切れる音がした。「終わったな」とすぐに悟った。だから「結果を聞くだけの病院にも行きたくなかった」。右足首を負傷。人生初の骨折だった。

 優勝の瞬間、グラウンドに立てなかった。今季4月25日から4番に固定され、打率3割、26本塁打、90打点。好成績で連覇に貢献したが「大事な残り30試合にいなければ意味がない。僕は何も貢献できなかった」とかぶりを振る。

 チームはこれからクライマックスシリーズに向かい、鈴木はリハビリと向き合う。12月予定の優勝旅行は「行っていられない」と不参加の意向。来春キャンプも別メニュースタートが濃厚だが「途中には合流してできるよう仕上げていきたい。休んでいる時間はない。もう十分すぎるくらい休みましたから」とすでに前を向いて歩き出している。

 負傷した今季最終戦をあらためて思う。「あの感覚があって終われたことは良かった。逆になければと思うと、ぞっとする。1つの引き出しが増えたな。最強になって帰ってきますよ」。野球の神様は、試練を与えてくれたのかもしれない。さらに強くなってグラウンドに立つために-。【前原淳】