巨人菅野4完封&甲子園5連勝「最後まで意地を」

阪神対巨人 9回裏阪神2死、糸井(右)を打ち取りガッツポーズする菅野(撮影・田崎高広)

 苦境のチームを反攻に転じさせた。巨人菅野智之投手(27)が、9回110球の2安打完封で2位阪神を圧倒する16勝目を挙げた。巨人では96年斎藤雅以来のシーズン4完封と、01年上原以来の甲子園5連勝をダブル達成。セ・リーグの勝利数と防御率で追随を許さぬ単独1位を走り続ける。前夜に10失点の大敗を喫したチームは、エースの力投で3位DeNAに再びゲーム差なしの4位と肉薄した。

 言葉よりも投球でメッセージを放った。2連続で中5日先発の菅野が、試合開始から次々とストライクを投げ込んだ。直球も変化球も全てが勝負球。無駄なボールは一切ない。「自分のピッチングをする。テンポよくいこうと思っていました」。14日の阪神戦で2失点、35球を要した初回を3者凡退で切り抜ける。2回も連続三振を含め8球で3人を制圧。立ち合いから真っ向勝負で押しまくった。

 前夜の10失点大敗の悪夢を打ち消したかった。「ピッチャーはできることしかできない。マウンドで何を伝えられるか」が信条。勝たなければ、引き分けでも自力でのCS進出の可能性が消える一戦だった。前夜の4位転落で11年連続のCSに黄信号がともったチームに、自分は何ができるのか。集中を高めていた試合前のロッカー室。村田真ヘッドコーチが「攻めろ」と背中を押してくれた。150キロの真っすぐがあるんだから、初球からファウルが取れる。内外の低めいっぱいでなくても大丈夫。言葉にうなずきながら「相手への対策よりも、初球からどんどん勝負する」と腹を決めた。

 チームが苦しい時にこそ仕事をしたい。常日頃の地道な積み重ねが、シーズン終盤で結実する。登板2日前にブルペンに入らず、平地の遠投で調整する理由は疲労軽減だけではない。

 菅野 僕の投げ方だと、平地の方が体重移動が難しいんです。ブルペンで投げる方が楽。だから、難しい方を選んでいるんです。

 つらく苦しくても、成長につながる道を行く。言い訳無用の選択が、各項目でキャリアハイを更新する快進撃を生み出してきた。自己最多の16勝目を「完璧に捉えられて野手の正面に飛ぶラッキーな打球もあった。納得しちゃいけないけど、いいピッチングができた」と振り返った。残り9試合は3位DeNA、2位阪神を追う決戦になる。「いい流れになった。最後まで意地を見せたい」。プロ5年目の集大成をぶつける。【松本岳志】

 ▼菅野が今季4度目の完封で16勝目を挙げた。巨人でシーズン4完封以上は96年斎藤雅(4度)以来、21年ぶりだ。これで甲子園球場では14年9月10日から5連勝となり、同球場では通算6勝1敗の防御率1・29。セ・リーグ本拠地6球場の中で、通算防御率はナゴヤドームの1・30を抜いて甲子園球場が最も良い。また、菅野はこの白星がプロ通算60勝目。菅野の通算125試合目で60勝到達は、巨人投手では7位のスピードで、2リーグ制後に入団した巨人投手では上原104試合目、江川115試合目に次いで早い。