アジア杯金の侍女子・阿部、東北に女子硬式広めたい

JAPANのユニホームを着て、バットを手に笑顔を見せる阿部(撮影・高橋洋平)

 遠く関西の地に、みちのく生まれの女侍がいた-。侍ジャパン女子代表(18歳以下)の阿部希内野手(京都・福知山成美3年)は仙台市出身。小松島小6年では楽天ジュニアに選抜され、仙台育英(宮城)のU18日本代表・西巻賢二内野手(3年)と三遊間を組んでいた。高校は京都へ野球留学を決断し、女子硬式野球部に所属。9月2日から香港で行われた女子野球アジア杯で、金メダル獲得に貢献した阿部が卒業後の未来を語った。

 

 まさに、いぶし銀の活躍だった。阿部は全5試合中4試合で遊撃と三塁で先発し、堅実な守備を披露。打っても8番でバントなどの小技を見せ、10打数3安打と攻守に存在感を発揮した。

 阿部 まさか代表に選ばれるとは思ってなかった。金メダル獲得はうれしいけど、驚きの方が大きい。日本のユニホームを着て、重圧を感じた。今までにない緊張感だった。

 燃える理由があった。6月19日に阿部の日本代表入りが発表された。一方で今夏の甲子園には楽天ジュニアの同期18人中9人が出場。その後、三遊間を組んだ西巻がU18日本代表に選ばれた。「同じ日本代表に選ばれたので私も頑張りたかった。女子が先に優勝して、勢いをつけたかった」。中3の12月には決起集会を開いていた。今でも連絡を取り合う仲で「違う高校にいくけど、お互い頑張ろうねって、ボウリングをしました」と当時を回想した。

 将来のビジョンを明確に持っていた。高校卒業後は大学で教職免許を取得しながら、硬式クラブチームでプレーを続ける。来年の目標はフル代表で臨む、現在5連覇中のW杯出場だ。「自分も選ばれて、6連覇を達成したい」と意欲を燃やす一方で「将来は野球の指導者になりたい」と夢を膨らます。

 現在、東北6県の高校で女子硬式野球部はない。来年4月に単位通信制のクラーク(北海道)がプロ野球楽天と提携して創部すると発表したのが現状で、実現しても1校だけだ。「高校の硬式だと女子は公式戦に出られない。東北には硬式がなかったので、福知山成美に来た。東北でもっと女子硬式を広めて、野球に携わっていきたい」。日本を背負った阿部が、東北の地で女子硬式野球のパイオニアになる日は近い。【高橋洋平】

 ◆阿部希(あべ・のぞみ)1999年(平11)5月9日、仙台市生まれ。3学年上の兄歩さんの影響で小松島小2年から野球を始め、小6で楽天ジュニアに選出。台原中では軟式野球部に所属し、仙台市選抜では最速144キロ左腕の仙台・佐藤隼輔(3年)らとチームメート。福知山成美に進学し、1年秋からレギュラー。2年夏、3年夏の全国選手権、3年春の全国選抜で3位。157センチ。右投げ右打ち。家族は両親と姉、兄、弟。