西武菊池雄星、亡き森コーチの言葉胸に9K完封

完封勝利の西武菊池(右)は森投手コーチのユニホームの前で帽子を脱ぐ。左は里トレーニングコーチ(撮影・鈴木みどり)

 役目を全うした。西武菊池雄星投手(26)がクライマックスシリーズ(CS)初登板を完封勝利で飾った。楽天打線に連打を許さず、9回を5安打9奪三振。レギュラーシーズンと合わせて今季楽天戦9連勝とした。最多勝&最優秀防御率の2冠に恥じない投球で、則本との投げ合いを制した。今年6月に他界した森慎二投手コーチ(享年42)からの言葉を胸に刻んでの快投。打線も爆発したチームはCSファーストステージ(S)突破に王手をかけた。

 両手を天に突き上げた。最後の打者を三直に仕留めると、菊池の顔に安堵(あんど)感がにじんだ。初のCSマウンドで完封勝ち。「ホッとしました。(則本より)絶対先にマウンドを降りたくなかった。少しでも隙を見せたらギアを上げてくる。気持ちで負けないようにいきました」と力強くうなずいた。

 ピンチでも自分の球を信じた。1回、先頭の茂木に左前打を許し、1死二塁とされたが「前に飛ばさせたら何かが起きてしまうかもしれない。走者がいる時は全部三振を取るつもりでいった」。狙い通りペゲーロ、ウィーラーを連続三振。立ち上がりの窮地を自らの力で断ち切り、勝利への流れを引き寄せた。

 先発陣の柱として飛躍を遂げた今季。胸の奥に1つの言葉があった。7失点でKOされた6月23日ソフトバンク戦の翌日。「慎二さんが『雄ちゃん、切り替えろよ』って言ってくれて。その声はずっと残っています」。同28日に多臓器不全のため急逝した森慎二投手コーチから掛けられた最後のげきだった。たとえ打たれても、次打者を抑える。たとえ黒星を喫しても、次の試合は勝つ-。ベンチに掲げられた同コーチの背番号89のユニホームは、常に左腕の背中を押してくれていた。

 再びグラウンドで会い、成長した姿を見せたいという願いはかなわなかった。恩に報いる方法は1つしかない。「日本一になって、チーム全員で一番いい報告をしたいと思っています」。だからこそ、志願して最後まで投げ抜いた。ファーストSを突破すれば、次回登板は、いまだ勝ちがないソフトバンクが待つファイナルS。「球数が増えても、9回まで投げて勝つことで自分自身にも勢いがつく。最後まで行かせて下さい、と伝えました」。

 今シーズンの楽天戦は負けなしの9連勝締め。仕事を全うし、バトンをつないだ。次のマウンドは森コーチとの別れとなった福岡。天国へ最高の報告をするために、仲間を信じ、その舞台に備える。【佐竹実】

 ▼CS初登板の菊池が完封勝ち。プレーオフ、CSの完封勝利は16年ファイナルS第1戦ジョンソン(広島)以来13人、15度目で、初登板初完封は同じくジョンソン以来7人目だ。いきなり1Sの第1戦で完封勝ちしたのは06年松坂(西武)以来2人目。その年の公式戦で最多勝を獲得した投手の完封は13年ファイナルS第1戦田中(楽天)に次いで2人目になる。また、西武は10-0で勝ち、継投を含めプレーオフ、CSで2桁得点の完封勝ちは、岡本洋(西武)が初登板初完封した13年1S第2戦西武15-0ロッテに次いで2度目。