福留14年CS「あの時も6回」予兆通り突破口V弾

6回裏阪神無死一塁、右越えに2点本塁打を放つ福留。手前は一塁走者糸井(撮影・たえ見朱実)

 阪神福留孝介外野手(40)が、決勝弾を放ってクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(S)突破に王手をかけた。6回、0-0の無死一塁からDeNA井納の直球をとらえる2ランで勝利を呼び込んだ。14年にもファーストS初戦に1-0勝利を決める本塁打を広島前田から放っており、同年チームは日本シリーズまで進出。その再現を期待させる1発になった。

 力強い弾道がセンター方向に伸びた。打球は総立ちの右中間席に飛び込んだ。誰よりも早く確信したのは、右手人さし指を天高く突き上げた福留だろう。

 福留 最高の気分。打った瞬間、いったと思った。なかなか甲子園で打った瞬間っていうのはない。風もなかったしね。

 中3日でマウンドに上がったメッセンジャーが好投。DeNA井納との1歩も譲らない投手戦を演じていた。0-0の6回。先頭糸井が右前打を放ち巡ってきた無死一塁の場面。カウント2-1から低めの147キロを仕留めた。

 打席に入る前、予兆があった。「ふと、あの時も6回だったなと…」。14年広島とのCSファーストS初戦。両者無得点で迎えた6回に決勝の先制ソロを放った。セ2位の阪神はその勢いのまま勝ち上がり、巨人とのファイナルSも突破。日本シリーズまで駆け上がった。その記憶がよみがえった中での本塁打だった。

 迷いなくバットを振った。そこには福留の生きざまが表れる。早実・清宮について「オレは拒否した立場だからな(笑い)。何も言うことなんてないよ。彼が決めた道なんだから」と言って笑ったことがある。福留は95年ドラフトで高校生では史上最多となる7球団から指名を受けた。結局、近鉄の指名を拒否。社会人を経てプロに飛び込んだ。人生の岐路での決断は、すべて自分で下してきた。そこに後悔はない。だからこそ迷いもいない。

 チームはキャプテンの一撃でファーストS突破に王手をかけた。金本監督も「今日は糸井か孝介かと思ったが、あの2人で2点というのは、さすがドメさんですね(笑い)」と最敬礼だ。初戦に勝利した球団のファイナルS進出確率は、なんと91%! 下克上日本一へ-。福留が風を吹かせた。【桝井聡】

 ▼40歳5カ月の福留が先制2ラン。プレーオフ、CSで40代選手の本塁打は15年1S第3戦井口(ロッテ=40歳10カ月)以来6人、8本目。この1発がV打点となり、40代選手のVアーチは12年1S第1戦和田(中日)以来2人目だ。プレーオフ、CSの最年長V打点は11年1S第1戦宮本(ヤクルト)の40歳11カ月だが、Vアーチは和田の40歳3カ月を抜いて最年長。日本シリーズの最年長Vアーチは92年第1戦杉浦(ヤクルト)の40歳4カ月で、40歳5カ月の福留は日本シリーズを含めたポストシーズン最年長Vアーチとなった。