DeNA逆王手!筒香尻もち泥まみれを着替えてV打

阪神対DeNA 5回表DeNA2死一塁、筒香は石崎の投球をよけた際にバランスを崩し泥だらけになる(撮影・横山健太)

 泥まみれの主砲が虎にかみついた。DeNA筒香嘉智外野手(25)が、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦で、決勝打を含む4安打2打点で打線をけん引。CSファイナルステージ進出へ逆王手をかけた。5回に顔面付近への厳しい攻めを受け、もんどり打って尻を泥だらけにしながらも、右前打でチャンスメーク。7回には試合を決める右前打を放った。負ければ敗退の土壇場で頼れる主将が強烈な存在感を発揮。チームはポストシーズンではプロ野球最多の21安打を放ち、13得点で雨中の乱戦を制した。

 水たまりには、泥だらけの主砲が映っていた。ロペスの犠飛で同点とした5回。筒香は石崎の2球目、顔面付近への147キロの直球でのけぞらされた。その勢いのまま、尻もちをつかされ左足が泥まみれになった。湧き上がる怒りに目つきを変えたが、ベンチで雨にぬれた革手袋とバットを拭いて落ち着かせた。

 厳しいコンディションに加え、厳しい攻め。「向こうも本気。こっちも本気。戦いなので遊びじゃない。感情を抑えすぎても、いきすぎでもダメ。そんな簡単なことじゃない。今までいろんな経験をして、分かってきたことがある。勝ちたい気持ちの表れだった」。これは決闘だと、腹をくくった。8球目。右前への執念の安打で、5番宮崎へつなぎ一時勝ち越しを呼び込んだ。

 午前中から降り続いた雨は、開始予定午後2時になっても、やまなかった。通常なら中止になるコンディションだったが、今日16日も雨予報。63分遅れで強行された。負ければ敗退が決まる一戦は泥にまみれた。何度も土を補充するが、雨が覆い尽くした。ダイヤモンドを描く白線は消え、内野フィールドの大部分にできた水たまりが光を放った。打球の勢いを殺し、守備陣は緩んだ地面に足を取られた。前代未聞の試合にも、筒香は「(打撃に)めちゃめちゃ影響があったわけではない」と意に介さない。

 中学まで暮らした和歌山県橋本市は、自然に恵まれた場所だった。ゲーム、テレビ、漫画…子供たちが夢中になる娯楽には目もくれず、日が暮れても外で泥まみれになった少年時代。「家の中にいるよりも野球の練習したり、外で遊んだ記憶しか残っていない」。雨と泥にまみれても、前日に屈辱の無得点負けを喫した打線を目覚めさせた。

 真っ白なズボンに着替えた7回無死一、三塁。同点に追い付かれた直後だった。初球をコンパクトに振り、右前へ勝ち越しタイムリーを放った。一挙6得点のビッグイニングを呼び込む起点となった。4時間35分の長期戦で13得点の大勝。決闘を制し4安打2打点で逆王手をかけた主砲は「明日、勝つしかない。明日、勝って広島に行けるように頑張ります」。阪神との最終決戦。泥にまみれてつかんだ白星で勢いを増し、フルスロットルで虎にぶつかる。【栗田成芳】

 ▼DeNA、楽天が1勝1敗に追いついた。3試合制のプレーオフ、CSで1勝1敗となったのは過去13度あり、追いついたチームが<3>戦も連勝したのは06年ソフトバンクと09年中日の2度で突破確率15%。