楽天岸CS初古巣斬りで逆王手「福岡行きましょう」

西武対楽天 攻撃中にベンチ前でキャッチボールする楽天岸(撮影・野上伸悟)

 楽天が負ければ敗退が決まる崖っぷちで迎えた西武とのクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージ第2戦は、先発岸孝之投手(32)が6回1/3を3安打無失点の好投。梨田監督の老練なタクトもさえ渡り、敵地で逆王手をかけた。上げ潮に乗って今日16日の第3戦を制し、日本一となった13年以来となるファイナルステージへ進む。

 ベンチの最前列にいた岸が、笑顔で飛び出した。梨田監督から、ポンと背中をたたかれ、ヒーローインタビューに行くよう、促された。「福岡行きましょう。みなさん」。西武ファンからのブーイング、楽天ファンからの声援を全身で受け止め、満面の笑みでインタビューを締めた。

 勝ちたかった。全力で飛ばした。初回、いきなり先頭の秋山に二塁打を許したが「ソロホームランくらいならいい」と割り切っていた。源田、浅村を内角への直球で片付けると最後は山川を落差のあるカーブで空振り三振。前夜に1発を放っていた中村を3点リードの5回1死二塁で迎えたが「びびらないように」。フルカウントから、ど真ん中147キロ直球で勝負を挑み、左飛に片付けた。

 エースからの気持ちをボールに乗せた。初戦に先発した則本は7失点でKOされた。そんな後輩から「お願いします」とメッセージを受け取った。「やっぱりノリの悔しい気持ちもあって。ちゃんとしたピッチングをして、勝って返せたら」。負ければ終戦の崖っぷちでチームを救った。

 個人的な思いもあった。7月19日を最後に7連敗を味わい、12戦勝ち星なしでシーズンを終えた。9月21日のオリックス戦ではキャプテン嶋、則本の発案で辛島、美馬がデザインした「岸Tシャツ」が用意された。グラブと同色の青いプレゼントに「こんなことまでしてもらって。青色好きなんだけどさ」とポツリ。後輩に気遣いさせる自分のふがいなさに、唇をかんだ。

 西武時代の08年日本シリーズではMVPに輝いた岸だったが、CSは5戦1勝3敗と黒星先行。「勝ち方が分からない。俺がCS投げない方がいいんじゃないか」と冗談を口にしたこともあった。ただただ、勝利を欲していた。新天地では初のCS。昨年まで獅子が刺しゅうされたグラブには、新たにワシが入っている。「ここで勝てなきゃ何をしているんだ」と気持ちを奮い立たせた102球。12試合の屈辱を経て、約3カ月ぶりにつかんだのは、チームの希望をつなぐ白星だった。【栗田尚樹】

 ▼岸が6回1/3を0点に抑えて勝利投手。西武は昨年まで在籍した球団で、古巣から白星を挙げたケースは、日本シリーズでは過去6人いるが、プレーオフ、CSでは初めてだ。西武時代はCSで5試合に登板して1勝3敗。ソフトバンクと対戦した12年1S<2>戦で勝利投手になっており、プレーオフ、CSの2球団勝利は豊田(西2、巨1)ホールトン(ソ1、巨1)杉内(ソ1、巨1)馬原(ソ2、オ1)中田(中4、ソ2)涌井(西2、ロ1)に次いで7人目になる。

 ▼DeNA、楽天が1勝1敗に追いついた。3試合制のプレーオフ、CSで1勝1敗となったのは過去13度あり、追いついたチームが<3>戦も連勝したのは06年ソフトバンクと09年中日の2度で突破確率15%。