神宮切符かけ東北3連盟優勝校、東北福祉大が決戦

富士大・鈴木(17年9月2日撮影)

 いざ決戦-。明治神宮大会東北地区大学野球代表決定戦が21、22日に岩手・花巻で行われる。富士大(岩手・北東北)、仙台大(仙台6大学)、東日本国際大(福島・南東北)の東北3連盟の優勝校に加えて、7月の東北地区大学選手権で優勝した東北福祉大(仙台6大学)の4校が、1枚しかない神宮切符をかけて戦う。「みちのくプラス!!」では出場4大学の注目選手と各リーグの表彰選手、ベストナイン、個人タイトルを取り上げる。

 

 リーグ8連覇を達成した富士大には「完全試合男」がいる。最速149キロ左腕の鈴木翔天(3年=向上)だ。8月27日の八戸工大戦(青森)では東北3連盟初の偉業を達成し「まさか自分ができるとは思わなかった。うれしい。最後は意識してギアを上げた」と喜びの声を上げた。主将の小林遼捕手(4年=仙台育英)が大学日本代表でユニバーシアード競技大会(台湾)出場のため離脱した期間の達成で、チームは勢いづいた。

 優勝を決めた八戸学院大(青森)戦でも先発したが、9回は2人の走者を許し、2死でマウンドを加藤弦(4年=八重山商工)に譲った。「最後に交代したのは詰めが甘い」と今後の糧につなげる。初戦は東北福祉大。7月の東北地区大学選手権決勝でコールド勝ち寸前から大逆転負けした相手を撃破し、2年連続4度目の神宮出場につなげる。

 

 仙台大のエース岩佐政也(柴田=4年)は、つかみどころがない。2枚看板を組むプロ注目の馬場皐輔(4年=仙台育英)が誇る最速155キロには及ばず、最高は143キロ止まり。変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップの3種類だけだが、3季連続5勝を挙げてリーグ現役最多の22勝で締めた。「安打を打たれても、点をやらなければいい」と自信を見せる。

 球を自在に操り、針の穴を通す制球力が持ち味だが、他にも武器があった。「馬場ほど球速がない。投手として生きていくために、考えさせられた」。4球種とも10キロ単位で球速を調整でき、120キロ台の抜いた直球で相手の狙いを外す。チェンジアップは110キロ台から130キロ台まで器用に投げて、相手を幻惑していた。初の神宮出場に向けて「まずは国際大戦。勝たないと始まらない」と、初戦に照準を合わせた。

 東日本国際大に待望の2枚看板が完成した。絶対的エース右腕の船迫(ふなばさま)大雅(3年=聖光学院)に続いて、右腕の粟津凱士(3年=山本学園)が台頭。今秋は2戦目を任され、3勝をマークした。16年春以来28度目の優勝を決めた9月17日の日大工学部(福島)戦で勝利を収めた粟津は「1年間優勝できなくて悔しかった。めっちゃうれしい」と胸を張った。

 2種類のシンカーが最大の武器だ。西武潮崎哲也(48=現2軍監督)の投球動画を参考に、カウントと空振りの両方が取れるまでに磨きをかけた。さらに今夏に集中して取り組んだ筋力トレーニングの成果で、春から体重は75キロから80キロまで増量。最速は3キロアップの145キロまで到達した。仙台大と対戦する初戦に向けて「投げるからには、打たれたくない」と意気込んだ。

 

 東北福祉大の4番楠本泰史外野手(4年=花咲徳栄)が雪辱する。2連覇を狙った今秋のリーグ戦は仙台大と東北学院大に連敗。まさかの3位に沈み、同大初の100安打達成も逃した。あと3本まで迫ったチーム6戦目から低迷。仙台大との2回戦で2安打を放ったが、9回の打席は四球に泣き、通算99安打で終戦した。「(運と実力を)持ってないだけ。何か足りないものがあるのだと思う」と悔しさをにじませた。

 これで終わらないのが楠本だ。8月末に台湾で行われたユニバーシアード競技大会では大学日本代表の4番として金メダル獲得に貢献。巧みなバットコントールを誇る中距離打者として結果を出し、プロ志望届を提出した。「代表決定戦で勝って、ドラフトの26日は祈りながら待ちたい」。富士大との初戦を突破し、決勝で2つ勝って神宮行きを決め、運命の日を待つ。

【取材・構成=高橋洋平】

 ◆富士大・鈴木翔天(すずき・そら)1996年(平8)8月19日、横浜市生まれ。南本宿小3年から野球を始め、万騎が原中では瀬谷シニアに所属。向上では高3夏に2番手投手ながら決勝に進出するも、東海大相模に敗退。富士大では1年春からベンチ入り。184センチ、82キロ。左投げ左打ち。家族は両親、兄、姉。

 ◆仙台大・岩佐政也(いわさ・まさや)1995年(平7)4月4日、宮城・山元町生まれ。山元二小1年から野球を始め、山下中では軟式野球部に所属。柴田では1年秋からエースで、3年夏は県準優勝。仙台大では1年秋からベンチ入り。右投げ右打ち。175センチ、62キロ。家族は両親、弟。

 ◆東日本国際大・粟津凱士(あわつ・かいと)1997年(平9)3月1日、山形市生まれ。山形七小3年から野球を始め、山形二中では軟式野球部。山本学園を経て、東日本国際大では1年春からベンチ入り。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉。

 ◆東北福祉大・楠本泰史(くすもと・たいし)1995年(平7)7月7日、大阪府生まれ、横浜市育ち。山内小4年から野球を始め、山内中では青葉緑東リトルシニアに所属。埼玉・花咲徳栄では3年春にセンバツ出場。東北福祉大では1年春からレギュラー。182センチ、75キロ。右投げ左打ち。家族は両親、弟。