中大・鍬原、紫グラブに誓う親孝行/ドラ注目選手

母が大好きな紫色のグラブを持つ中大・鍬原

 プロ野球ドラフト会議が26日に行われる。史上最多の高校通算111本塁打の早実・清宮幸太郎内野手(3年)に注目が集まる中、大学、社会人にも1位候補の即戦力投手がそろった。日刊スポーツでは注目の7投手を紹介。第1回は、最速152キロで大学屈指の速球派、中大の鍬原拓也投手(4年=北陸)だ。東都の「ドクターK」は女手一つで育ててくれた母・佐代子さん(48)にプロ入りで恩返しする。

 

 「母のおかげで、野球を続けられた。プロに行くことが最高の恩返しになる」。中大・鍬原は母・佐代子さんへの思いを胸に、運命のドラフト会議を迎える。幼少時から女手一つで育ててくれたことにも感謝だが、母の言葉がなければ今の鍬原はなかった。

 中3の夏、本気で野球をやめると決めた。橿原磯城シニアでエースを任され、全国大会出場が決定。その直後だった。「野球をやる意味が明確じゃなくて、嫌だなと。友達と遊ぶ方が楽しかった」と振り返る。監督らと話し合いの場が持たれ、母から「野球を続けてほしい」と泣きながら言われた。初めて見る涙に、母親の思いを知り、プロ入りでの親孝行を誓った。

 あれから7年、ドラフト1位候補にまで成長した。最速152キロ直球を軸にシンカー、スライダーで三振を積み上げる。大学3年秋から先発に定着し、リーグ通算11勝を挙げた。身長175センチながら、遠投120メートル、50メートル走6秒2と抜群の身体能力を誇る。「小さくても150キロは投げられるし、体は関係ないです」と胸を張った。高校時代は通算22発で、打力の評価も高い。

 プロで生き抜くための伝家の宝刀も携える。シンカーはプロ顔負けで、DeNA吉田編成部長から「クワボール」と命名された。サイドスローだった中2から投げ始めた勝負球。中大入学後、ロッテ石川、ソフトバンク摂津を参考に改良を加えた。

 ドラフトイヤーを迎えた今春、グラブの色を青から紫に変更した。「母が好きな色。今年に懸ける思いを示そうと」。中3の夏に誓った「親孝行」の文字も入れた。野球を続けると決めた時、母に言った。「プロで活躍して、家や車を買ってあげる」。約束の実現へ向け、指名を心待ちにしている。【久保賢吾】

 ◆鍬原拓也(くわはら・たくや)1996年(平8)3月26日、岡山県生まれ。小3から野球を始め、中学時代は橿原磯城シニアに所属。中3時には1学年下の巨人岡本とともにジャイアンツカップ3位に輝いた。北陸高では1年夏からベンチ入りし、秋は県大会準優勝で北信越大会に出場した。2年秋から背番号「1」も甲子園出場はなし。球種はスライダー、カーブ、シンカー、フォーク。家族は母と妹。175センチ、77キロ。右投げ右打ち。