阪神ドラ4島田、速いいね 桐生に勝った足魅せた

上武大対関東学院大 8回裏上武大1死一、二塁、阪神からドラフト4位指名を受けた上武大・島田は中飛で二塁からタッチアップ。送球がそれる間に本塁に向かう

 これが桐生に勝った快足だ! 阪神ドラフト4位の上武大・島田海吏(かいり)外野手(21)が30日、関東地区大学野球選手権初戦の準々決勝、関東学院大戦(神奈川・サーティーフォー相模原)に臨み“神走塁”連発で快勝に貢献した。中学3年の時、今年9月の日本学生対抗選手権で100メートル9秒98の日本記録を樹立した桐生祥秀(21=東洋大)に走り勝った実力は本物。阪神では05年の赤星憲広以来出ていない盗塁王は、この男で間違いない!?

 島田が夢中で一塁ベースを駆け抜けた。2点リードで迎えた8回1死。阪神ドラフト4位の島田が、自慢の快足を飛ばして二塁内野安打をもぎ取った。

 島田 常に全力で走ると自分の中で決めています。どんなゴロでも、自分の足ならセーフになる可能性があると思って走っています。(8回は)セーフになってくれてよかったです。

 真骨頂はここからだ。5球目に完璧なスタートを切ったが、ファウルで二盗は幻に。だが、次打者の右前打で二塁に進むと、平凡な中飛で三塁へタッチアップを敢行した。あまりの快足に慌てたのか、相手の送球がそれる間に本塁を陥れ、大きな追加点を奪った。試合最終回に追い上げられ、5-4の辛勝。結果的にこの1点がモノをいった。

 島田 前の打席でバントを失敗していたので、最後は自分が塁に出て、かき回してやろうと思っていた。(今日の結果は)自分の中では0点です。

 追加点の好機だった6回無死一、二塁では走者を送りきれず、厳しい自己採点。だが、50メートル走5秒75を誇る脚力は、大きな武器だ。熊本・鶴城中時代は軟式野球部に所属しながら陸上競技でも活躍した。3年時にはジュニア五輪に出場。100メートル準決勝では、何と、今年9月に日本人初の9秒台を出した桐生祥秀より先着した逸話も残る。熊本県の中体連大会の100メートルも11秒01で優勝した快足は、ますます磨きがかかっている。

 左打席から8回に放った内野安打は一塁ベース到達まで3・78秒。スタンドで見守った吉野誠スカウト(39)は「あれが魅力。3・8秒を切るのも、よく見ています」と持ち味発揮にうなずいた。3回には送りバントを決め、4回に右犠邪飛を放つなど、3打数1安打1打点。献身的な姿勢でチームの勝利を導いた。

 島田 チームに貢献することしか考えていないので、もっと多く1点に関わっていきたい。自分の結果よりも、とにかく勝ちにこだわりたい。

 まずは神宮へつながる関東大学選手権の初戦を突破。プロへの手土産は神宮出場と日本一だ。阪神では吉田義男と赤星憲広しかいない3人目の盗塁王は、この男に違いない。【真柴健】

 ◆島田海吏(しまだ・かいり)1996年(平8)2月6日、熊本県生まれ。野球は宇土東小4年から始め、鶴城中(軟式野球部)を経て九州学院。1年秋からレギュラーとなり、2年春に甲子園出場(2回戦敗退)。上武大では2年春から正中堅手で5度の全国大会出場。3年春のリーグ戦では首位打者。ベストナイン2回。3年夏と4年夏は大学日本代表に選出され、今夏はユニバーシアードで連覇に貢献した。175センチ、72キロ。右投げ左打ち。

<トラの俊足選手>

 ▼牛若丸 85年の日本一監督としても知られる吉田は現役時代、軽快で堅実な守備で「今牛若」の異名を取った。54年51、56年50盗塁で2度盗塁王のタイトルを獲得。通算350盗塁。

 ▼F1セブン 01年の春季キャンプで、野村監督が俊足選手7人(高波、平下、上坂、松田、沖原、赤星、藤本)に命名。若手にスポットを当て定位置争いを活性化させた。この年、新人の赤星が50メートル5秒6の俊足を生かし、39盗塁でタイトルを獲得。赤星は「レッドスター」と呼ばれ、5年連続盗塁王となった。通算381盗塁はプロ野球歴代9位タイ。阪神の盗塁王は、2リーグ分立後は吉田と赤星しかいない。

 ◆関東地区大学野球選手権 明治神宮大会出場を決める大会。出場枠を持つ東京6大学連盟と東都大学連盟を除き、関東地区の5連盟が参加する。各連盟の秋季リーグ優勝校と準優勝校、合わせて10大学がトーナメント方式で戦い、決勝進出の2大学に出場権が与えられる。関甲新学生1位の上武大はこの日の準々決勝から登場して勝利。11月1日の準決勝で、創価大(東京新大学1位)と筑波大(首都大学2位)の勝者に勝てば、神宮大会出場が決まる。