盗塁阻止率2割弱…盗塁2刺し鷹高谷が誘い込んだ罠

7回裏DeNA2死、筒香は見逃し三振に倒れ悔しがる。捕手高谷(撮影・栗木一考)

 司令塔の攻守にわたる活躍で2年ぶりの日本一へ王手をかけた。シリーズ初の先発マスクとなったソフトバンク高谷裕亮捕手(35)が初回に2つの盗塁を刺し、ピンチを防げば、4回には2点適時中前打。工藤監督の起用にこたえた。チームはこれで3連勝。最高のムードで第4戦を迎える。

 緊張の立ち上がりも、35歳のベテラン捕手は冷静沈着だった。1点を先制した直後だった。1回裏。先発武田がピリッとしない。先頭桑原をフルカウントから歩かせた。2番梶谷の2球目。桑原が走った。高谷は素早く二塁へ送球。完璧なコントロールで桑原を刺した。続く梶谷も歩かせ、2死一塁となった4番筒香の初球。今度は、梶谷が走ったが、これも見事に刺しDeNAの足を封じた。「常に準備はしていた。ノーマークにしたら走ってくると思った」。今季の高谷の盗塁阻止率は1割9分4厘だが、ここ一番で正確な送球を披露した。

 シリーズ2試合は途中出場。後輩の甲斐が2試合とも先発マスクをかぶった。敵地・横浜の3試合は武田、和田、バンデンハークが先発予定。3人とはシーズン中バッテリーを組んできただけに、準備に余念はない。2戦目が終わった29日もいつものようにバインダーにDeNAの資料を詰め込み、ヤフオクドームを後にした。「とにかくやることはしっかりとやっておかないと。準備だけは怠らないようにしないと」。高谷の口癖だ。5四死球と制球の定まらなかった武田を5回途中までロペスのソロ1本に封じ込む苦心のリードを続けた。

 マスク越しの観察眼はバットでも生きた。4回だった。1死二、三塁の場面でウィーランドの148キロの直球を中前へ運ぶ貴重な2点タイムリーを放った。「早く追加点が取りたいと思っていたので。いいところに飛んでくれました」。直前の1死一、三塁の場面ではセーフティースクイズを失敗したものの、ミスをカバーするには十分すぎる前進守備の二遊間を破る殊勲打となった。

 3連勝を飾った工藤監督は攻守に活躍した高谷を称賛した。「(初回は)ある程度仕掛けてくると思っていたが、普段から練習していることをしっかり出してくれた。リードを含めチャンスでいいバッティングもしてくれた」。ベテランの活躍で一気にシリーズ制覇に王手をかけた。【佐竹英治】

 ◆高谷裕亮(たかや・ひろあき)1981年(昭56)11月13日生まれ、栃木県出身。小山北桜卒業後に富士重工へ進んだが、故障のため2年で退社。1浪後に一般入試で白鴎大へ。06年大学・社会人ドラフト3巡目でソフトバンク入団。179センチ、84キロ。右投げ左打ち。