阪神がソフトバンク戦力外山田大樹の獲得調査へ

阪神が獲得調査に乗り出すソフトバンク山田

 阪神がソフトバンクから戦力外通告を受けた山田大樹投手(29)の獲得調査に乗り出すことが10月31日、分かった。山田は今季、ソフトバンクの分厚い投手陣に押し出される形で1軍登板は2試合に終わった。だがウエスタン・リーグで2年連続最多勝を獲得するなど好成績を収め、現役続行の意思を表明している。来季優勝を狙う阪神にとって、先発補強は課題の1つ。貴重な先発左腕だけに、今後の動向が注目される。

 金本阪神がウエスタン・リーグの2年連続最多勝左腕を獲得する可能性が浮上した。ソフトバンクから戦力外通告を受けた山田の調査に着手することが判明。先発補強は今オフの課題のひとつで、早急に動くことになった。

 山田は06年に育成1位で入団。10年に支配下登録されると、12年には自身最多の8勝をマークした。左肘手術を乗り越えるなどの苦労人でもあり、11年にはパ・リーグの育成選手としては初の日本シリーズでの勝ち星を挙げた。ここ数年、ソフトバンクは投手陣の層が厚く、1軍での登板機会は減少。今季の先発は2試合だけで、唯一の勝利はくしくも阪神戦だった。6月11日にヤフオクドームで対戦。4番福留を2打数無安打に抑えるなど、5回1失点と好投した。

 1軍での出番は減ったが、ウエスタン・リーグでは健在ぶりをアピール。22試合に登板し、10勝5敗、防御率2・35の好成績を残している。10月29日に球団から戦力外を告げられたが、現役続行の意思を表明している。年齢も29歳と若く、コンディション面でも不安はない。チャンスをもらえば、先発ローテーションを務める力は十分にある。

 阪神は今季、先発陣が不安定でやりくりに苦しんだ。藤浪や岩貞が不振で、2軍生活が長く、プロ2年目の青柳も伸び悩んだ。メッセンジャーが故障離脱した後は、9月に日本ハムからメンドーサを獲得するほどの台所事情だった。ドラフトは仙台大・馬場、亜大・高橋といった即戦力投手を上位指名。FA市場では西武の右腕野上に興味を示している。金本監督はシーズン終了後のオーナー報告で、「先発がしっかりしてくれれば、十分に戦えると思う」と話している。先発投手の整備はV奪還の鍵を握る。獲得調査の結果次第ではあるが、左腕山田が加入すれば、投手陣の幅は広がる。

 ◆山田大樹(やまだ・ひろき)1988年(昭63)7月30日、茨城県生まれ。つくば秀英在学中には、マリナーズも調査に訪れた。06年育成ドラフト1巡目でソフトバンク入団。10年3月に支配下選手登録。12年には、育成ドラフト入団選手として初の規定投球回を満たした。189センチ、99キロ。左投げ左打ち。

<山田大樹投手あれこれ>

 「王カーブ」が山田の大きな武器の1つ。転機は09年秋だった。06年に育成選手としてソフトバンク入団。だが、最初の3年間では結果を残せなかった。09年オフに契約が1度切れた。しかし、契約が切れながらも参加していた同年秋季キャンプで、王球団会長に素質を見いだされ、育成選手として再契約。その秋キャンプで王会長が視察最終日にチェックした選手の1人が山田で、自身の左腕を振りながら「手のひらを空に向けるように投げるんだ」とカーブの投げ方を指導。王会長が早実時代に得意としていた縦に大きく割れるカーブを伝授された。

 10年に支配下登録。同年にパ・リーグ育成出身投手として初勝利を含むシーズン4勝を挙げた。11年には5月20日阪神戦で、育成出身の日本人投手として初完封を記録。日本シリーズでもパ育成選手で初の勝利投手に。12年は初めて規定投球回数をクリアし、8勝をマーク。育成選手としてプロ入りした投手で規定投球回に到達したのは山田が初めてだった。