「スーパー筒香くんです」DeNA筒香が目指した姿

4回裏DeNA2死二塁、筒香はバンデンハークから中越え2点本塁打を放つ(撮影・松本俊)

 奇跡につながる1発が飛び出した。DeNA筒香嘉智外野手(25)が「SMBC日本シリーズ2017」第5戦で1号本塁打を放った。1点を追う4回2死二塁、ソフトバンク・バンデンハークから中越えに逆転となる2ラン。劣勢のチームを勇気づけた。再びリードされて迎えた6回にも中堅フェンス直撃の適時二塁打を放ち、再度の逆転劇につなげた。3連敗の崖っぷちから2連勝。奇跡を起こすべく再び、福岡へ乗り込む。

 スーパーな一打でハマスタをよみがえらせた。1点を追う4回2死二塁。筒香が打席に入る。スタンドのファンが祈りを込めて両手を掲げる。ゆったり、どっしりと足場をならす。ソフトバンク・バンデンハークのカウント1-1からの3球目。153キロ直球を164キロの打球速度でバックスクリーン左に押し込んだ。日本シリーズ初アーチ。待ち望んだ1発に「自分のスイングでうまく押し込むことができた」と誇らしげに胸を張った。

 ダイヤモンドを周回する主砲の胸元に「S」がキラリと光った。シーズン終盤に入ってから愛用するネックレスのペンダントトップはアルファベットの「S」がモチーフのシンプルなデザインだった。TSUTSUGOHの「T」でもなければYOSHITOMOの「Y」でもない。ジョークなのか本気なのか意外な理由が、願いが込められている。

 筒香 スーパー筒香くんの「S」です。

 今季の開幕直後から序盤は不振で苦しんだ。夏場に差し掛かるころ、気分転換を図ろうとネックレスを新調した。売り場で「Y」もしくは「T」を探したが、不運にも品切れ。その時に直感的に目に飛び込んできたのは「S」の文字だった。「調子も悪かったし、弱気になっていた部分もあったかもしれない。自分を鼓舞する意味で『スーパー筒香くん』になりたいと思って…」と照れくさそうに明かす。当初は苦肉の策だったが、自らを奮い立たせる起爆剤にした。

 大人びた振る舞い、発言は25歳には到底見えない。期待、重圧、全てを受け止めて歩を進めてきた。シーズン前にはWBCで侍ジャパンの4番を張った。チームに戻れば主将としての重責も追加される。その全てを背負い、チームメートを引っさげて自身初の日本シリーズまで駒を進めた。日本最高峰の舞台で文句なしの1発。6回の再逆転劇への中越え適時打に「みんながつないでくれたので自分もつなぐ気持ちで打席に入った」。嶺井の二ゴロの間に決勝のホームを踏み、両手を広げベンチに飛び込んだ。

 ハマの主砲は、どんなに立派になっても愛らしい野球小僧の精神は忘れない。「いつも通り、いい雰囲気でやれている。あと2つ勝ったら日本一。浮かれることなく気を引き締めて福岡に行きたい」。“スーパー筒香くん”なら奇跡を起こせる。【為田聡史】

 ▼筒香が4回に逆転2ラン、6回に適時二塁打で3打点を挙げた。シリーズでDeNAの本塁打は60年2本、98年4本、17年6本の通算12本目となったが、逆転本塁打は球団史上初。第4戦までの筒香は走者なしの場面で8打数3安打に対し、走者を置いた場面は四球、右飛、三振、三振、一ゴと、ノーヒットで打点0。第5戦では走者二塁で中本、走者一、二塁で中2と、ようやく4番らしい勝負強さを見せた。