ソフトバンク東浜「拓也と一緒に」美酒/独占手記

工藤監督(左)に迎えられ涙を流す東浜(撮影・栗木一考)

 ソフトバンク先発陣の若き柱、リーグ最多勝の東浜巨投手(27)が日刊スポーツに手記を寄せた。4日は、背中に張りを訴えた千賀に代わり、中5日で緊急先発。シリーズ白星こそ逃したが、この1年で甲斐拓也捕手(25)とタッグを組み、バッテリーで成長したと話した。

 何とか今日(4日)、日本一を決めたいと最初から飛ばしました。野手のみなさんが逆転してくれて、本当に感謝です。9月中旬から腰や股関節が痛くて、状態はあまり良くなかった。1年間トレーニングと先発を続けてきた中で、本当に最後まで体が持ってくれたと思います。

 今日も86球、拓也(甲斐)のサイン通りに投げました。2回1死一、三塁の時にランエンドヒットをかけられましたが、拓也がよく二塁で刺してくれました(三振ゲッツー)。強肩もリードも。本当に拓也のおかげですね。

 シーズン開幕直前の練習日、僕と千賀が清水バッテリーコーチに呼ばれました。「今季は拓也を使いたい。若い2人と組ませるから」。首脳陣が僕と拓也を育てようという考えで組ませてくれた。僕は千賀のように力で押すのではなく、配球で抑えるタイプ。だから、拓也も大変だったでしょうけど、一緒にたくさん話して配球を考えました。そういう背景があったから、首を振らず拓也のリード通りに投げようと心に決めていました。何度も、あれっ? えっ? と思うこともありましたが、サイン通りに投げて抑えられることの方が多かった。シーズン24試合全部拓也と組んだからこそ、16勝で最多勝が挙げられたと思います。工藤監督が現役のころ、城島さんを育てたという話は聞いたことがありますが、僕の場合はそんなんじゃないです。拓也と一緒に、という感じです。

 

 1年間投げて、筋力トレーニングもガンガンやりましたからね。よく体がもったなと思います。DeNAは西武とソフトバンクと一緒に12年ドラフトで僕を1位に指名してくれた球団。あの時DeNAに行っていたら、今ごろどうなっていたのかなとは思います。ソフトバンクに入団した時は投げることで精いっぱい。大学3年で痛めた肘にまだ炎症があって、直球も140キロ出なかった。周囲の期待に応えられず、外食に出るのも、周囲の目が気になって出たくなかったですね。でも、今思えば肘の炎症を言い訳にして、トレーニングをやっていなかった。

 今年は最速151キロ出ました。でも、常時それくらい出せるようにしたい。拓也と組んだ配球のクセも来季は他球団が研究してくるはず。こっちも投球に幅を持たせなければと考えています。プロ野球は奥が深い。紙一重のところでの攻防がある。やっと、そういうところで相手と正面からぶつかるところまで自分が来られたと思います。また来年、この優勝の味を味わいたい。拓也とさらに高みを目指します。(ソフトバンク投手)