阪神金本監督、北條130分矯正 超ロング密着指導

打撃練習中の北條に直接指導する金本監督(右)。平野コーチ(手前)も寝転びながら懸命に指導(撮影・河南真一)

 若武者再生へ、愛の密着指導だ。阪神金本知憲監督(49)が7日、北條史也内野手(23)に約2時間10分のロ~ング・マンツーマン指導を行った。フリー打撃とマシン打撃の合わせて376スイングを徹底指導。北條への期待値が高いからこそ、指揮官も熱が入る。今季不振に陥った男を再生させるため、愛情タップリにムチを振った。

 異例の徹底指導が、期待値の高さを物語っていた。第1幕はフリー打撃の時だった。金本監督の北條への指導がスタート。約1時間で北條は162スイング、そのうち18本の柵越えを放ったが、これで終わりではなかった。フリー打撃終了から約1時間半後、第2幕が開幕した。

 室内練習場へ移動してのマシン打撃。2人だけの空間で、金本監督はここでも約1時間の付きっきり指導。ときおりマシンを止め、じっくりと話す時間を挟みながら、北條の214スイングを見届けた。右膝を曲げて、右腰を投手方向に回転させる打撃技術を徹底伝授。打ち終えたのは午後5時半過ぎ。日は落ち、辺りはもう真っ暗だった。指揮官がチェックしたスイング数は、実に計376。北條が左足を上げた際に軸足をプルプルと震わすシーンもあるほどの愛のマンツーマン指導だった。

 北條に対する期待値が高いからこそ厳しく指導してきた。「去年のいい時の形がまったくなくなっていたから。簡単なことなんだけど。下半身が緩む。ユルユルで…」と指揮官は嘆く一方で「でも本人も思い出したんじゃないかな。打球もだいぶ変わってきたし」と手応えも。「今の状態では1軍にはまずいられない」としたが「もう1度去年のいい時の状態とか感覚が戻れば、またチャンスはある」と期待を込めた。

 金本監督は言う。「今年も上本とか大和とか去年出ていない選手が出ているんだから。いいモノを使う。できるモノを使う。シンプルですよ。同じだったら若いヤツを使う」。チャンスをモノにできなければ脱落するだけ。北條も「今日できたことが明日できなくなるというのはダメ。日に日に良くならないと、教えてもらえないので」と危機感をあらわにする。さらに「基本の軸を作るには疲れてから頑張ってやるのが、身につく。今年、全然ダメで(期待を)裏切ってしまった。来年はそんなにチャンスを与えてくれないと思う」。北條にとって、愛のムチへの最高の答えは、遊撃ポジションの再奪取だ。【真柴健】

 ◆17年の北條 3月31日の開幕戦広島戦に「6番遊撃」で先発出場。ベテラン鳥谷を7番に押しやってのスタメンだった。4月9日巨人戦でプロ初の1試合2本塁打と、出だしは順調だった。ところが、打率が1割台となるなど低空飛行が続き、6月30日に出場選手登録を抹消された。7月21日に1軍に戻ったものの、9月7日に2軍に舞い戻りそのまま閉幕。83試合出場で46安打、打率2割1分。16年は122試合出場、105安打、打率2割7分3厘などブレークして遊撃を守る機会も多かったが、17年はそこから大きく数字を下げたシーズンとなった。

<阪神監督近年の主な長時間指導>

 ◆真弓監督 08年秋季キャンプで、就任したばかりの真弓監督が大砲候補の桜井に密着。フリーからロングティーまでの約2時間で、飛距離は一気に伸びた。09年春季キャンプでは、新井貴の一塁から三塁への再転向に向けて1時間4分、133球のノック。真弓監督は「1歩目が重いな」「捕ってすぐ投げろ」と指示を送った。

 ◆和田監督 13年秋季キャンプで、緒方に約1時間半のバント練習。30球連続で成功するまで終わらず、緒方は約500球を転がし続けた。14年CSファーストステージ広島戦の直前、甲子園の室内練習場で打撃不振に悩む上本に80分の打撃特訓。

 ◆金本監督 16年春季キャンプの2月12日に金本監督は陽川に90分の徹底指導。全体練習後の特打では、他の選手に目もくれず、陽川に付きっきり。さらに同18日には鳥谷に1時間の密着レッスン。バットを出す角度を入念に確認し、217スイングをチェック。初めて打席でフリー打撃の実演をするなど熱を帯びた。