大谷獲りヤンキース有利 入札制現行維持で大筋合意

笑顔で移動する日本ハム大谷(撮影・横山健太)

 日本野球機構(NPB)と米大リーグ機構(MLB)が行っているポスティングシステムに関する改定交渉が、今オフは現行制度を維持することで大筋合意したと、AP通信が8日(日本時間9日)報じた。同システムを利用してメジャー移籍を目指す日本ハム大谷翔平投手(23)にとって大きな前進となり、いよいよ争奪戦がスタートする。キャッシュマンGMが直々に来日して“本気度”を示し、使える契約金の額も有利なヤンキースが、大本命となりそうだ。

 メジャー挑戦を公言した大谷が、いよいよスタートラインに立つことができそうだ。

 NPBとMLBは5月以降、ポスティングシステムで、大リーグ球団が日本球団に支払う譲渡金などについて交渉を続けてきた。10月31日には有効期間が終了し、制度の運用が停止していたが、NPBとMLBが継続していた改定交渉の末、今オフは現行制度を適用することで大筋合意したと、AP通信が伝えた。

 報道によると、ポスティングシステムの譲渡金の上限が現行制度と同じ2000万ドル(約22億円)に設定され、支払う意思のある全ての大リーグ球団が選手と交渉できる内容で合意したという。最終的には選手会の同意を得た上で、オーナー会議での承認が必要だとしている。

 承認されれば、大谷の米移籍は大きく前進する。争奪戦の本命となるのが田中も所属するヤンキースだ。8月にはキャッシュマンGMが来日し、札幌で直接視察。「才能のある選手がたくさんいた」と満足そうに帰国の途についた。松井やイチロー、黒田ら、日本人選手を獲得した実績が多く、大谷には心強いポイントのひとつとなりそうだ。

 大谷自身が得る、金銭的なメリットも大きい。昨年12月に成立した大リーグの新労使協定では、「25歳未満でプロリーグ所属6年未満の海外選手」に使用できる契約金は各球団で枠がある。多くの球団は総額475万ドル(約5億2300万円)。その中でヤ軍はここまで使用した金額が少なく、メジャー30球団中2番目の325万ドル(約3億5800万円)を残している。もっとも多いレンジャーズの353万5000ドル(約3億8900万円)と大差なく、環境面などを加味すれば、有利な位置にいるといえる。一方、今季ワールドシリーズを戦ったアストロズやドジャースなどの「残額」は30万ドル(約3300万円)で、明らかに分が悪い。

 先月12日に右足首の手術を受けた大谷はこの日、都内の病院で定期検査を受診し、帰寮後は初めてジョギング、ネットスローを行った。ポスティングの報道には「特にないです。そこは僕のどうにもできるところではないので」としたが、これまでは申請すらできない状況だったため、事態は大きく動きだす。