サファテ初正力賞「日本一監督の称号」の慣例壊した

外国人選手として初めて正力賞に選出されたソフトバンク・サファテ

 プロ野球の発展に大きく貢献した野球人に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が9日、都内で開かれ、ソフトバンクのデニス・サファテ投手(36)が選出された。05年にロッテ・バレンタイン監督が同賞を受賞しているが、外国人選手の受賞は初めて。シーズン記録を更新する54セーブを挙げ、日本シリーズでは第6戦で3イニングをまたいでMVPを獲得した剛腕が、近年は慣例化していた「正力賞=日本一監督」を覆した。

 日本球界最高峰の権威を誇る正力松太郎賞に「デニス・サファテ」の名前が刻まれた。選手が単独で選ばれたのは00年の松井秀喜以来。クローザーの選出は98年の佐々木主浩以来。外国人選手の受賞は初めて。慣例化していた「日本一監督への称号」を覆した。

 議論は白熱した。日本一へしのぎを削ったソフトバンク工藤監督、DeNAラミレス監督に対する評価は揺るがない。特にリーグ3位から巻き返していったラミレス監督に対して「素晴らしいものがあった」の声が出た。討論が深まっていく過程で、中西太氏が「サファテの54セーブ。出てきたら必ず抑える。日本シリーズも3イニングまたいで、決着をつけた」と述べ、潮目を作った。

 巨人菅野、西武菊池の名前も挙がって選考の幅が広がる中、間近でサファテを見てきたソフトバンク王球団会長が「体の手入れ、練習への姿勢。手本になっている。5、10年後に振り返っても、今年は彼の力投じゃないか」と語り、最後は満場一致で決まった。

 日本シリーズ第6戦、1点を追う9回から登板した。内川のソロで追い付くと延長戦も続投。3イニングを封じ込め、サヨナラでの日本一を呼び込み、王会長を男泣きさせた。樹立したシーズン54セーブの新記録以上に、魂のこもった投球が重鎮たちの心にズシッと響き、正力賞の選考過程にまで届いた。

 王会長 この十数年、日本一監督の流れができていたのでは。外国人選手、抑え。もっと幅広く考えていいのではないか。活躍すれば対象として議題に挙がる。ファンへのアピール度。サファテがふさわしい。

 既成概念を払う剛腕。順調にいけば来オフに外国人枠が外れ、名球会のグリーンジャケットに袖を通す。金字塔を前に、日本球界への功労者に贈られる勲章を手にした。【宮下敬至】

 ◆正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に大きな功績を残した正力松太郎氏を記念し、1977年に制定された。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に、選考委員が選出する。受賞者は日本一に輝いた監督が多く、最多は第1回を含めて4度選ばれた王貞治氏。04年に米大リーグのシーズン最多安打記録を更新したイチロー(マリナーズ)と、13年に24勝0敗でチームの初優勝に貢献した田中将大(楽天)に特別賞が贈られた。