五輪、WBC…1歳上阪神福留が巨人阿部の道しるべ

ロングティー打撃で調整する巨人阿部(撮影・為田聡史)

 【グアム18日=為田聡史】猛虎の主砲にロックオンだ!! 巨人阿部慎之助内野手(38)が開幕スタメンへ、南国の地で順調に調整を続けている。ランニング、ノック、打撃練習の後、ウエートトレーニングまで約4時間のメニューを消化。5日の本格始動から、着実にステップアップを遂げている。今季は3月30日、阪神との伝統の一戦で幕開け。プロ入り前から道しるべとなってきた阪神福留の存在が発奮材料になる。

 開幕まであと70日。ふつふつと闘志が湧いてきた。強い日差し、生暖かい南風が、1カ月前の記憶をよみがえらせる。昨年12月、米ハワイでの名球会総会に初参加。帰国直前、ホテルの部屋のバルコニーに出て風を浴びていると「おお! 隣だったんか!」。声の主は阪神福留だった。「お互い、いい年齢になりましたけど、来季もよろしくお願いします」と頭を下げた。

 鏡で映されているような感覚に陥った。昨季は129試合で119安打、15本塁打、76打点で打率2割6分2厘。1歳上の福留は127試合で116安打、18本塁打、79打点で打率2割6分3厘。本塁打、打点、打率のいずれも、僅差で上を行かれたが、同等に渡り合った。「アマ時代から目標にしてきた人。五輪に出たいと思うきっかけにもなった」。高校3年の夏だった。社会人野球の日本生命に進んで1年目の福留がアトランタ五輪に日本代表として出場。「1歳上で、すごい衝撃だった。その姿は憧れだったし、目標になった」と、超トップ選手への第1歩を教えられた存在が今は目の前にいる。

 世代交代の波が押し寄せる中、生え抜きスターの阿部も例外ではない。マギーに加え、ゲレーロも新加入。「まずはグラウンドに立っていることが一番。自分のやることをやる。今までもそうしてやってきた」とプロ入りから17年間の方法論に迷いはない。今季のグアム自主トレは単身で敢行。今は「スタメンを決めるのは監督。自分で決めるわけじゃない」と、自分自身のペース、考えを貫き、己の肉体の声に耳を傾けることに集中している。

 開幕戦はこれまで15試合に出場。昨季は先制2ランを含む3打点の活躍で走りだした。通算では55打数16安打1本塁打で12打点。ペナントレースの始点を「開幕戦は143分の1だけど、それだけじゃない。今回はオフが長い。その期間の成果を見せるという意味では一番近い場になる」と位置づけた。過去の実績で舞台に立とうとは思っていない。伝統の一戦には、追いかけ続けてきた背中は目前にある。【為田聡史】