ヤクルト青木、打撃の神様川上氏彷ふつ赤バット5発

赤色のバットを手にランチ特打を行うヤクルト青木(撮影・足立雅史)

 ヤクルトに“打撃の神様”が降臨した。7年ぶりに復帰した青木宣親外野手(36=前メッツ)が入団会見翌日の7日、沖縄・浦添キャンプに合流した。初日からランチ特打を行い、112スイングで柵越え5本。バットの芯を外したのは12球のみと、日本で首位打者3度、メジャー6年の通算打率2割8分5厘の実力を示した。今季は赤褐色のバットを新調。「打撃の神様」と称される川上哲治氏を思わせる赤バットも使い、安打を量産する。

 7年ぶりとは思えないほど、青木がヤクルトにいる風景は自然だった。練習前、背番号23のユニホーム姿でナインの前へ。「アメリカナイズされているので、日本のしきたりとか少し忘れているかもしれません。先輩ですけどガンガンいじってくれていいので、よろしくお願いします」。笑顔で呼びかけると、大きな拍手と「ルーキー!」の声が飛んだ。入団会見で「愛している」と表現した古巣の懐かしく温かい空気を吸い込み、ほおを緩めた。

 終始柔らかかった表情だが、打撃練習では凜(りん)と締まった。いきなりのランチ特打。赤褐色のバットを手に、宮出、石井琢の両打撃コーチが投じる球を、軸回転で鋭くはじき返した。112スイングで芯を外したのは12球で、89・3%はバットの芯でとらえた。「思ったより良かった。もう少し練習をこなしていけば問題なく実戦に入っていけそう」とうなずいた。

 日本野球に順応すべく、着実に準備を整えている。復帰決定の報道直後、ミズノ社にNPBで使用するバットを発注。重さは900グラム前後とメジャー時代より約20グラム増やし、色も白色に赤褐色のものを加えた。赤バットといえば「打撃の神様」といわれる川上哲治氏を想起させる。「黒にしようかなと思ったけど(日本での使用は)ダメみたいなので。色に関しては打てなかったら変えるとか験担ぎしながら」と話すものの、“打ち出の小づち”の筆頭候補にするつもりだ。

 遠投ではきれいな球筋を見せ、打撃練習でも5本の柵越え。「飛ぶね。(オフの自主)練習で汚いボールを使っていて飛ばなくて不安だったけど安心した。投げるのも楽だと思う」と日本の公式球を手にすることに不安はない。声を張り上げながらシートノックなどの戦術的な練習以外はこなし、午後5時25分に初日を終えた。「活気があって気持ちよかった。昔を思い出しながら楽しんでできました」。ヤクルトに頼れる「打撃の神様」が帰ってきた。【浜本卓也】

 ◆赤バット 47年に川上哲治(巨人)が使用。大下弘(セネタース)の青バットとともに、プロ野球ブームの火付け役となった。64年にカラーバットは禁止となったが、81年からダークブラウン(こげ茶)が解禁。02年に「赤褐色」のバットも解禁され、岩村明憲(ヤクルト)諸積兼司(ロッテ)谷佳知(オリックス)らが使用。現役では陽岱鋼(巨人)茂木栄五郎(楽天)などが使っている。