岩佐ら東北の社会人野球ルーキー27人が飛躍誓う

筋力トレーニングを行うJR東日本東北の岩佐

 みちのく社会人ルーキーが、プロ野球にドラフト指名された同年代に負けない飛躍を誓った。JR東日本東北内定の岩佐政也投手(22)は仙台大で阪神1位・馬場と2本柱で活躍し、TDK長谷川拓帆投手(18)は仙台育英のエースとして楽天6位・西巻と甲子園出場。トヨタ自動車東日本の千葉英太(18=千厩)も、全国区ではなかったソフトバンク1位・吉住晴斗(鶴岡東)に続くプロ入りに挑む。東北主要企業6チームの内定新入社員総勢27人を特集する。【取材・構成=鎌田直秀、高橋洋平】

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 JR東日本東北(宮城)の岩佐は緩急を使った軟投を磨き、豪腕馬場に続く。最速143キロながら多彩な変化球を武器にリーグ通算22勝。エース番号18も背負った。「馬場が1位でプロ入りしてくれたことで、自分ももっと成長して2年後は目指したいという気持ちが芽生えた。まずは都市対抗、日本選手権で日本一。負けたくない」。仙台6大学リーグではDeNA8位・楠本や巨人育成・笠井(ともに東北福祉大)を抑え、日本ハム6位・鈴木(東北学院大)に投げ勝ってきた自負もある。

 大学までは実家通いだったため、寮生活だった馬場の“アッシー役”として車で送り迎えしてきた。常に一緒に将来についても語りあった。柴田高3年夏は仙台育英に決勝で敗れ、仙台大最後のシーズンも富士大に敗れて明治神宮大会出場を逃した。「宮城のチームで主力として全国舞台に立ちたい。150近くまで球速を上げて、より変化球を生かす投球を身につけてプロ志望届を出す」。違う環境で切磋琢磨(せっさたくま)することも約束した。

 すでに初の寮生活も始まり、食生活改善などで体重も4キロ増。昨秋の日本選手権で90球で完全試合を達成したチームの先輩・西村祐太投手(28)からも多くを吸収するつもりだ。「自分の理想は27球で試合を終われること」。究極の投球術で、まずは社会人野球のエースとなる。

 ◆JR東日本東北の新入社員

 加藤(伸びのある最速144キロ速球で大学時代リーグ全制覇)「先発でも抑えでも結果を出し、14年以来の都市対抗出場が目標」

 長谷川(4年春に開花したアンダースロー右腕)「テンポ良く投げて野手のリズムを作り、攻撃の流れも導く投手になりたい」

 工藤(高1夏の甲子園で登板した最速145キロ右腕)「まずは体を作って2、3年後には信頼される投手になりたい」

 大保(17年神宮大会準優勝に貢献)「自分の魅力でもある足を生かし、都市対抗出場に向けて走塁でチームに勢いをつけたい」

 鈴木(山形・山辺町出身で昨夏甲子園出場)「外野手の層は厚いが、本塁打など長打力でチーム最年少の若さをアピールしたい」

 

 トヨタ自動車東日本(岩手)の千葉は日の丸戦士になってプロ入りを果たし、家族に恩返しするつもりだ。最速143キロの直球とスライダーを武器に、高2夏には延長13回で23奪三振を記録するなど8強に進出した「岩手のドクターK」。「プロ野球選手になることが一番の夢ですが、その前に社会人の侍ジャパンに入りたい」と目標を掲げた。

 父成哲(なりあき)さん(42)が自営業を継ぐために、スキーで冬季五輪に出場する夢を断念した後悔の気持ちも聞いた。「今は自分の成長が父の夢。父がかなわなかった日本代表とプロの2つの夢を背負って頑張りたい」。父は車の改造で日本一に輝く第2の夢を達成する姿も見せてくれた。生きざまも手本だ。

 高2春(16年)の県大会中、最大の応援者だった祖父哲平さん(享年79)が急死した。形見の遺骨入りのネックレスを身につけて躍進。「三振を奪えてきたのは祖父のおかげ」。“勝負守り”は千厩高1年で野球部新エースの弟哲太さん(16)に引き継いだ。

 現在は1人暮らしに備え、祖母亮子さん(73)宅で“修行”中。「母も支えてくれたし、祖母も家事を教えてくれる。弟の手本にもなりたい。自分はまだ野球を本気でやっていない。伸びしろはあると思う。鶴岡東の吉住くんみたいに、今度は岩手の人を驚かせたい」。未完の大器に注目だ。

 ◆トヨタ自動車東日本の新入社員

 原田(全国経験はないがガッツあふれるプレーが魅力)「負けん気の強さを生かしてチームの競争率を上げてレベルアップしたい」

 小林(2年夏、3年夏にクリーンアップ打ち甲子園出場)「右方向にも長打を打って勝利に貢献し、社会人日本一を目指したい」

 古屋(3拍子そろい内外野万能)「走攻守にスピード感あるプレーをレベルアップさせ、三鬼監督をドームに連れて行きます」

 

 TDK(秋田)の長谷川は故郷・秋田に戻り、06年以来の都市対抗優勝に挑む。「生まれ育った秋田の地に恩返しできたら良い。チームはベスト8を目標に掲げていますが、やるからには優勝です」。昨夏の甲子園は、センバツ王者の大阪桐蔭との3回戦で9回1失点。最速143キロの直球にカーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリットなど変化球も豊富。「ピンチでも粘って無失点に抑える。とにかく勝てる投手になりたい」と勝利の伝道師となるつもりだ。

 プロ志望届を出して臨んだ昨秋のドラフト会議。同級生で主将の西巻が地元楽天に指名される中、自身は悔しさを味わった。「プロや大学にいった仲間も、お互いの結果を気にしていると思う。エースとして投げていたので、これからも結果を出していかないと」と負けるつもりはない。

 今年の秋田は例年よりも雪深い。高校時代は少なかった筋力トレーニング中心の生活。「体幹だったり新たなメニューで充実している。これを野球の技術につなげないと意味がない」。TDKのエースから、3年後のプロ入りへ。「あの日があったから頑張れたと思えるようにしたい。でも雪はいらないですね」と、笑顔の中に強い決意がにじみ出た。

 ◆TDKの新入社員

 小野(高校では『りんごっ子』として甲子園躍進サイドスロー)「先発、中継ぎ、抑えのどこでも任される信頼感のある投手に」

 木場(大学3年秋にはベストナイン&最優秀防御率獲得)「秋田で育ち、ずっと県内でやってきたので、秋田の野球を強くしたい」

 小坂井(パンチ力ある捕手)「キャッチャーでクリーンアップを打って、攻守でチームを引っ張ることができる選手になりたい」

 飯野(4年秋の立正大戦で2戦連続弾)「50メートル6秒0の足を生かし、センターの守備だけでなく、打撃では常に前の塁を狙いたい」

 

 ◆日本製紙石巻(宮城)の新入社員

 中島(最速146キロ直球に多彩な変化球魅力)「2年後のプロ入りも目指し、150キロの直球に、コントロールとキレを磨きたい」

 片野(大学3年秋にベストナイン&盗塁王)「自信のあるベースランニングで都市対抗と日本選手権出場に貢献したい」

 石黒(昨秋の神宮大会は4番センターで準優勝)「1年目はデータもないと思うので、チャンスで1本を打ちたい」

 ◆七十七銀行(宮城)の新入社員

 鈴木(高校、大学での全国経験豊富)「自分も震災でつらい思いもしている。宮城の人に喜んでもらえるよう、都市対抗に出たい」

 長谷川(長打魅力の大型内野手)「1年目から試合に出ることが目標。力強いフルスイングでホームラン数と高打率を残したい」

 長田(富士大では2番ながら長打も魅力)「ライトでレギュラーをつかみ、都市対抗でホームランを打ちたい」

 ◆きらやか銀行(宮城)の新入社員

 市毛(星槎道都大で昨秋の明治神宮大会に出場し、準優勝に輝いた右腕)「絶対負けねぇ。目標は日本一しかない!」

 新井(最速149キロの直球に5種類の変化球を操る。高3春にセンバツ出場)「きらやかのために、山形のために頑張ります!」

 島田(平成国際大で中心選手)「3年連続の都市対抗出場、日本選手権初出場に貢献できるように一投一打に集中する」

 伏見(富士大で8連覇を達成。高い守備力が自慢)「大学の同級生が多く社会人に進んだので切磋琢磨(せっさたくま)したい」

 長橋(常磐大では主軸を任され、182センチ、87キロとガッチリとした左打ち)「役割に徹して、勝利に貢献する一打を放ちたい」

 飯塚(高3春夏に聖光学院で甲子園出場を果たした左打ちの外野手)「1年目らしくフレッシュに頑張ります」